ボイス

【ボイス:2023年9月13日】鈴木章斗選手


今は、成長を意識する以上に、試合に出たい欲や負けたくない気持ちが強い

ルーキーとして迎えた選手が
存在感を増していくとき、
そこに見えるのは、成長する様。
2年目のシーズンを過ごす鈴木章斗選手は
シーズン終盤へ向かうリーグ戦において
期待を担う選手に変化しつつある。
ここまで来た、その一歩一歩の足跡をたどる。

PKキッカーに立候補
めちゃくちゃ楽しかった天皇杯4回戦
 高校や大学を卒業して、新たにプロ生活をスタートさせる選手たち。その舞台ですぐに活躍する選手もいれば、少し時間がかかる選手もいる。特に高卒で加入した選手は、フィジカル面での個人差もあって、技術や戦術の理解度だけでは足りない場合もある。それだけに、それぞれの成長過程もまた楽しみになっていく。
 今シーズン、プロ生活2年目を過ごす鈴木章斗選手もまた、成長過程が楽しみな選手の一人。昨シーズンは、なかなか出場機会を掴むことはできなかったが、今シーズンは一歩一歩、着実に歩みを進めているようで、公式戦で見る機会が増えている。

 特に、若手の活躍という点で記憶に新しいのは、8月2日に行われた天皇杯4回戦(ラウンド16)、ヨドコウ桜スタジアムで行われた対セレッソ大阪戦。負けたら終わりのトーナメント戦は、延長までもつれ込んでも決着がつかず、勝敗をPK戦に委ねることになった。
 ゴールはホーム側。選手は、C大阪のサポーターと相対する。先行となったベルマーレのトップを切って蹴ったのは田中聡選手。山口智監督から指名されての1番手。次に蹴ったのが鈴木章斗選手。こちらは蹴りたいと立候補しての2番手だった。

「PKになったときに監督から『誰か蹴るヤツおるか』みたいになって僕と(奥野)耕平くんが手を挙げて。そしたら(石井)久継も手を挙げて。順番は智さんが決めて、って感じでした」

 PK戦のイメージで言えば、そのチームを支える中堅やベテラン選手から順に蹴るであろうというところ。しかし、この試合のPK戦を勝利に持ち込んだのは、二十歳前後の選手たちだった。

「プロに入ってからPKは蹴ったことがなかったし、PK戦自体もなかったですし。蹴りたいなっていうのがありました。一番はやっぱり、その前に自分がシュートを外していたことと、そのあとに相手に決められて、というのがあったので。自分が決めて勝ちたいという気持ちもありました」

 後半71分から途中出場した鈴木選手。90分終了までに2本、延長終了までの間にさらに3本、チームで一番多い合計5本のシュートを放ったことが公式記録に残っている。90分終了までの2本のうちの1本を決めていれば、例え最後に相手にPKを与えたとしても、そのあとのPK戦を戦うことなく勝利できていたはず、という思いがあった。

「途中出場で、けっこうオープンな展開でした。難しい状況で入ったけど、相手も疲れているなかで、いいチャンスはあった。味方からしても決めればラクに試合を締められますし。あそこは本当に、けっこう後悔したというか、なんで決められなかったのかなっていうのは感じましたね」

 フォワードの選手らしい後悔。それに加えて、勝利への責任感だけじゃない、その舞台に立つ立場の選手だけが持てる好奇心のようなものも働いたようだ。

「できれば蹴りたくはないんですけど、でも、それも初めての経験だったんで、なんか楽しそうかなっていうのもあった。結果、入ったんでめちゃくちゃ楽しかったんですけど。ペナルティスポットにボールを置きに真ん中を歩いて行くときに、ちょっとわからないんですけど、相手の応援がすごくて、そこで1回、自然と笑みが出た。『あー、すごいなあ』と思って。『こんなんなんや』『ヤバいなー』と思いながら。でも、なんか自信はありました」

 平日とはいえ、ホームであればサポーターも駆けつけやすい。ましてやラウンド16ともなれば、タイトル奪取に向けてサポーターの本気度も上がってくる。C大阪サポーターが陣取るゴール裏は、自チームへの応援と、相手チームへのブーイングでヒートアップしていた。そこを目掛けて蹴るペナルティーキック。ある意味、プロ選手の醍醐味を味わった瞬間だった。

「自分が2点目を決めていればっていうシーンが何回もあったんで、本当に勝って良かったと思います」

 今シーズン、ここまでに掴んだチャンスのなかで培ってきた自信。その裏付けがあってこそのPKシーンとなった。

 

>苦手の守備で成長するために今季はスイッチ役も理解