ボイス

【ボイス:2015年10月14日】高山薫選手 [1]

VOICE 高山薫選手
1つでも上の順位でシーズンを終わるために、
どんな相手でもしっかりと自分の良さを出してプレーすることが課題。

4シーズン目の指揮を執る曺貴裁監督とともに挑戦する、3度目のJ1リーグ。
湘南スタイルを貫きながら、勝ち点にもこだわり、
トップリーグに定着することを目標に掲げたシーズンの戦力として
帰ってきた高山薫選手。
期待されて呼び戻された選手らしく、
リーグ戦において警告の累積による出場停止の1試合を除く全試合に出場し、
トラッキングデータの上位に名を連ねるなど、存在感を放つ。
再び戻ったチームが掲げる目標のために、
違うチームで過ごした1年間で得た経験を活かし、
さらなる切磋琢磨を重ねる日々を送る。

2013年に感じた“差” その差を埋めるものを求めて

「今思うと、よくレイソルからオファーが来たと思いますね」

2013年の移籍を振り返って高山選手が口にしたのは、そんな言葉だった。意味するところはその時の自分自身のプレーがいかに未熟だったかということだが、同時にここまでの2年間に積み上げた経験を糧にした成長が表現されている。2年前とは違う高さのレベルにいるからこそ、過去の自分の拙さがわかる。

「その時は必死でやっていたつもりだったんですけど、今思えば全然良くなかった。良いプレーをした記憶もないし、得点のチャンスもあったのに活かせなかったし。オファーがもらえるようなプレーをした覚えがない。まぁ、だから通用しなかったわけだけど。
初めてのJ1は、相手のことをリスペクトし過ぎたと思うし、全然できなかったっていう印象が強いです、正直。それでもシーズンを戦いながらチームはレベルアップしていたと思うし、内容の良い試合もできたと思うけど、個人としては気持ちの部分がまだまだこう……メンタルも超不安定だった。今が安定しているってわけじゃないけど、その時は特に不安定だったなって思います」

J2だったとはいえルーキーイヤーからリーグ戦の大半で試合出場のチャンスを掴み、順調に経験を重ねてきた高山選手。プロ3年目の年に初めてのJ1に挑戦し、この年もリーグ戦34試合中32試合に先発出場、そのうちの6試合を途中交代しているだけで1年を通してほぼフル出場を果たした。

「J1はレベルも高いし、J2とは全然違った。チームにJ1の経験者は少なかったし、自分自身、初めてのJ1だった。試合にはたくさん出させてもらっていたけど、気持ちの面で全然『中心』にはなれてなかったなと思います」

曺貴裁監督が指揮を執って2シーズン目、監督自身がチームを率いる立場としては初めてJ1に挑んだ年。そのチームは平均年齢23歳と若さがあふれていたが、J1で試合を経験したことのない選手が大半を占め、中核を担うのは24、5歳の選手だった。若いチームの強みと弱みを持っていたが、結果的にはどちらかというと弱みの方が際立つこととなった。

「もしも最初に連勝とかして勢いがついていたらわからなかったですけど……でもやっぱり正直あの時は難しかったと思います。その時その時、みんな頑張っていたし、経験がすべてじゃないけど、J1での経験がある選手も少なかったし、自分自身も若くて経験が少なかったと思います」

J2への降格が決まった頃、高山選手に柏レイソルからオファーが届いた。

「俺、小さい頃から新しい環境に行くっていうのが、あんまり好きじゃないってタイプの人間なんですよ。湘南が好きだったし。J2に落ちちゃったら出たいなんていう気持ちももともとなかった。そんなときに柏からオファーをもらって……なんだろう? 新しい環境に行くのは嫌だなっていう気持ちもあったんですけど、俺の中で湘南に残る方が逃げなんじゃないかなって、その気持ちを強く感じたんです。自分自身、移籍した方が絶対に成長できるなって思ったし。サポーターが横断幕を出してくれて、すごくありがたかったんですけど、自分が移籍を肯定的に考えることって今までなかったし、その気持ちに嘘をついて残るのは、そのときの俺の気持ちでは違うなって思った。自分にとっての厳しい試練ということなんだろうな、出なきゃいけないっていうのを自分が一番わかっているんだから、というか。だからもう決断は早かったです」

2013年に柏レイソルと対戦した2試合は、ともに善戦はしたが、どこか圧倒的な力の差を感じた記憶が残る。

「レイソル戦、負けたんですけど湘南は結構いいサッカーしたんですよ。湘南はあの年は良い試合をしても勝てなかった、勝負弱かったですよね。なんかやっぱり勝負強さが違うなと。そういう試合が多かったかなって思う。
対戦してレイソルは良いチームだって思っていたし、それが自分のチャレンジだって思った。それが自分の中では一番、逃げじゃなくて正しい選択だなって」

強いと感じたチームだからこその移籍。チームに残って1年でJ1復帰を目指すのもチャレンジなら、違うチームで違う形の戦い方を選ぶのもまたチャレンジだ。高山選手は、届かなかった力の差を確かめるように、その懐へ飛び込むことを選んだ。

「レイソルはずっと結果を残してきているチームで、勝負強さもあったし、そういう意味ですごく勉強になりました。だから、移籍したことは今でも後悔してないです」

ベルマーレに戻ってきた今、改めてそう話せるのは充実したシーズンを過ごしてきたから。その経験を今度はベルマーレで活かす。