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【ボイス:2015年7月8日】菊池大介選手 [2]

底知れないやりがいを感じられる左サイドハーフ 攻守に渡ってまだまだ成長できることを確信

 転機となった昨年、菊池選手はそれまでのポジションから一列下がって左サイドハーフを主戦場とした。このポジションの変更もまた菊池選手を良い方向へ導く、ひとつの道しるべとなった。

「1回、フレッシュになって新しいポジションに取り組んで、最初はうまくいかないこともありましたし、特に守備のところは戸惑う部分もありましたけど、でも去年やっていくなかですごく身体に馴染みましたし、自分を出せる楽しさとか、そういうことを今も強く感じているところなので、非常に大きなできごとだったと思う。やっていて、自分でもまだまだ上手くなれるな、もっと極めたいという感じでやれているから、すごく良かった。そういうきっかけを与えてくれた曺さんには感謝しています」

 サイドハーフは湘南スタイルのなかでも特に運動量の要求されるポジションであり、マッチアップする相手との攻守に渡る駆け引きがボールの状況にかかわらず常に存在する。そんななかで自分自身の良さを出していくと同時に、新しい境地も開くことができた。

「推進力っていう部分でいうと非常に出しやすいポジションなので、前に走ることもそうだし、ドリブルもそうだし。あとはやっていくなかで守備にもすごく魅力を感じられた。守備で走るのはイヤだと思っていたし、みんなも守備はイヤだと思うんですけど、逆にその守備でがんばって走って相手のボールを取れたり、一対一で負けないことにも快感を覚えてきた。やっていてすごく楽しい。
 例えば同じようなフォーメーションの相手だと、相手の右サイドハーフっていうのはバチバチやり合う相手になるんで、そういう選手を圧倒できるようになりたい。そういう意味ではまだまだだと思うので、やりながらもっともっと極めていきたいなと思いますね」

 攻撃的な選手にはありがちだが、以前の菊池選手にとって守備は苦手なものだった。しかし、攻守がわかりやすく表裏の関係を持つサイドハーフにコンバートされてから守備力が向上し、苦手だった守備面で目を見張るプレーが見せることが多くなった。

「あんまり『イヤだな』って感じがなくなったし、『抜かれる』感じもしなくなった。でもそれは、日々の積み重ねだと思います。ちゃんと意識してやってきた成果だと思うし、どっちかっていうとそういうポジションになって守備を疎かにできないっていうか、守備もやるべき仕事のひとつっていうか……。守備の感じがまたちょっと違うポジションに変わったことによって守備で自分の強さを発揮しないとダメだということをすごく強く感じた。そこから練習でもそうだし、映像を観たり、いろんなところから吸収して今に至ってると思います」

 360度視界が開ける攻撃的なポジションに配されることが多かった菊池選手にとってタッチラインを背負う経験も新鮮だった。

「開いたら敵は来ないし、真ん中をやっていたというのもあってすごく余裕を持って視野を取れるようになった。非常に駆け引きしやすいっていうか。相手のサイドの選手だったり、最終ラインに対しての駆け引きだったり、抜けていくタイミングといったところは、逆にすごくやりやすくなったのを自分のなかですごく感じた。今もいろんな抜け出し方とか駆け引きはやりながら勉強してるし、吸収できてるなっていうのは感じてます」

 攻守に渡って、このポジションの魅力にはまっている。

「このポジションは自分に合ってると思うし、いろんな駆け引きの魅力っていうか、底のなさっていうものが、やればやるほど見えてくる。抜け出し方とか、ドリブルの仕方とか。試合をやるのが本当に楽しい。まぁ、ボールを取られることも多いし、ミスをすることもあるんですけど、そのなかでもいろんな可能性を自分が感じられているのはすごいと思います」

 左サイドハーフにコンバートされた最初の年となった昨年は、左のセンターバックを務める三竿雄斗選手とのコンビネーションも光った。左サイドでボールを持つ菊池選手の後ろを三竿選手がオーバーラップしていくプレーは、湘南スタイルを象徴するシーンのひとつとなった。

「うまくいくことが多かったのですごく楽しいですね。あいつも運動量があって守備も良いんですけど、どっちかっていうと攻撃に絡むのを得意としていて、それが良いところ。お互いにお互いの良さを引き出したい、僕も三竿の良さを引き出せるようにプレーしていたし、あいつも僕がやりやすいように守備も攻撃も動かしてくれたんで、そういう部分で非常にバランスがとれてたなって思う。ふたりの関係で相手を抜けたり、その流れで点が取れたりするとすごくうれしかったですし。
 あいつを直接使わない時も、あいつが上がって相手を引き寄せた分、自分がドリブルできたり、攻撃に絡んでいけたりしたので、そのがんばりを次のプレーで無駄にしちゃいけないっていう責任感も生まれたし。お互いの責任感や信頼関係っていうのは、まだまだですけど、深めていけたら良いと思います」

 J1を戦う今シーズンは、昨年よりもレベルアップしたコンビネーションが求められる。

「考え方はそんなに変わらないと思います。でも、去年は三竿が外から追い越すことが多かったですけど、逆に中に行ったり、自分と薫(高山)くんとかシャドーの選手との関係で3人目にあいつが出ていったり、自分が中で受けたりとか。今年は、攻撃のバリエーションのアイデアを曺さんはじめスタッフの人たちがたくさん指導してくれている。もちろん相手は強いしレベルも上がってるんですけど、自分のプレーの選択や幅が広がっていると思うので、やっていてすごく楽しいです」

 ケガから復帰した大竹洋平選手や今シーズン帰ってきた高山選手、新加入の山田直輝選手など、個性豊かな個人技を持つシャドーの選手が前線での攻撃にこれまでになかったアイデアや意外性に満ちたバリエーションを加える。

「去年はなかった絡みとか、抜け出し方とか、そういうものが多くなってきているんで、すごく充実してます。まだまだですけど、いろんな選手といろんな関係で、チャンスを多く作り出したいと思うし、それがきっかけでゴールが取れれば。うまくいけばチームとしてもいろんな攻撃が展開できると思う」

 これまでの試合でも、去年は見ることがなかった攻撃の形が数多く展開されている。このすべてが練習の成果だ。

「集中して練習していると、意外と身体が自然に反応することが多いです。試合で同じような場面になったときに、『あ、これやったやつだ』とか『こう動いてみよう』とか、試合をしながら自分の頭で意識してやれてるっていうのもあるから、やっぱり練習って大事だなって思いますね」

 チャンスを多く作ることによって得点力を上げることを狙う曺監督。攻撃の形のバリエーションはこれからも増えていきそうだ。