ボイス

【ボイス:2024年4月23日】大野和成選手


今、できないことは伸び代。成長への意欲はより旺盛に

個々の選手を評価するとき、
具体的なプレーやゴールの数が取り上げられることが多い。
しかし、ピッチにいる、その存在感が物を言う選手もいる。
大野和成選手はそんな選手の一人。
積み上げてきた努力が存在感に映し出されるベテランに、
ベルマーレで迎えた9シーズン目の思いを聞いた。

湘南のサッカーを体現し続けて
ベルマーレで過ごす9シーズン目
 大野選手が最初にベルマーレに加入したのは23歳のとき。出場機会を求めての期限付き移籍だった。その後、所属元のアルビレックス新潟に戻って4シーズンを過ごし、再び黄緑色のユニフォームを身に纏ったのは28歳。それから7シーズン目を迎えた今年は、チーム最年長選手の一人となった。「年齢も上がっているので責任感はあると思います。うーん、責任感というより危機感の方があってるかな」

これは、ベテランとなった今、チームのなかでどんな役割を担っているのかという質問の答え。危機感という、ちょっと意外な言葉が返ってきた。

「若い選手なら試合中にトライしてミスしても、またトライすることが成長に繋がるし、ミスのあとでもチャンスはあるだろうけど、例えば僕たちベテランが試合でよくないプレーをしてしまったとき、『このプレーに取り組んで次の試合に出よう』とはなかなか考えられない。やっぱり試合に出たら結果につなげないといけない、という気持ちになります」

年齢を問わず選手に求められるものは、試合に勝つために自分自身最大限のプレーをすること。しかし、大野選手がキャリアを重ねて感じているのは、結果へのより強い責任。ベテランになればなるほど試合に出場した際には常に及第点のプレーとそれに伴う結果がまず第一に求められると考え、試合中のよくないプレーは次への可能性を狭めていくという危機感につながっている。ミスがつきもののスポーツとはいえ、少なくともミスをしたらそれをカバーするプレーを自分に求めるメンタルが必要だ。

「次の試合に出られる保証はないから、目の前の試合をしっかりやる、この試合に全てを出すっていうマインドでここ数年やってきてる。若い選手と比べたら明るい未来があるとはいえないので、年を重ねるごとに結果につなげていかないといけないという気持ちが強くなっているという変化を感じます」

そうはいっても試合に出るためのポジション争いに年齢やキャリアは関係ない。勝ち抜かなければ試合出場の機会は掴めない。だからこそ大野選手は、若い選手たち以上に日々の切磋琢磨を大切にして、自分に足りないものを積み上げるチャレンジを強化している。

「自分の良さだけを出しても試合には出られない。プラス監督の求めることにチャレンジして成長しないと。客観的に見て、『自分はこれができる』だけじゃなくて、監督が求めることを上げていかないと試合には出られないし、チームの勝利にも貢献できないことは分かっている。そこにチャレンジするのは年齢関係なく。いつも考えながらやってます」

例えば、「技術」。これは、公式サイトの選手ページに掲載されている50の質問の「今の自分に足りないものは?」という問いへの答え。しかし、息の長い選手は、試合で見せるプレーに成長の足跡が見て取れるもの。ベテランの域に達したといってもいい大野選手ではあるが、今もシーズンを重ねるごとに進化が見える。

「守備が得意っていっても体の向きとか寄せ方とか、それも技術だし、攻撃だったらやっぱりもっと周りを見ていいボールを供給しないといけないなっていう思いもあるし。全部の技術が足りない。でも、その分自分はそれが伸び代だと思っているからトライするし、練習もする。その繰り返しだと思います」

足りないと感じるところが伸び代。年齢を重ねてもなお、そこは追求し続ける。ちなみに、今年、誕生日を迎えると35歳になる。身体的な変化を感じる年齢でもあるが、そこは問題ないようだ。

「わかんないです、ぶっちゃけ。それを訊かれたときは毎回言うんですけど、湘南のサッカーがキツから身体がキツいのか、年齢でキツいのかがまったくわからない。湘南のサッカーはリトリートしない、走るサッカー。守備も奪いに行くっていうアクション。だから、そのキツさなのか、年齢でキツいのか、僕にもわかりません(笑)」

湘南のサッカーを表現するために、走り続けることに変わりはない。

いい距離感がうちの生命線 90分間の継続が課題 >