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【ボイス:2022年9月1日】杉岡大暉選手


サッカー選手として未来へつながる答えを見つけた代表招集

高校卒業後、ベルマーレでプロ選手としてのスタートを切った杉岡大暉選手。
3シーズンを過ごしたのちに鹿島アントラーズへ移籍した。
ところが、昨シーズン途中から期限付き移籍という形で再びベルマーレへ。
そこには、この先のサッカー人生を生き抜くために
必要な何かを探すという理由があった。
どうやら最近、その問いの答えが一つ、見つかったようだ。

問には答えを
視界が開けた代表招集
 7月に開催されたE-1選手権は、選手たちにとってカタールW杯メンバー入りに向けて最後のアピールの場ともいえた。国内組に限られたとはいえこのチャンスに、ベルマーレからは3人の選手が招集された。2019年以来の招集となった杉岡大暉選手もその一人だ。
「前回呼ばれたコバアメリカ(CONMEBOLコパアメリカブラジル2019)は、言ったらオリンピック世代が中心だったので、僕的には今回が初めての招集という感覚でした。その中で、海外組はいないですけど、Jリーグのトップレベルの選手たちと一緒にプレーすることによって、今後自分がどうやって生き残っていくかというのを、すごく考えるきっかけになりました」

 それは代表の中でいかに生き残るかというよりは、プロサッカー選手としての方向性。自分はどんな選手に成長したいのか、どんな特徴を強化して他の選手と違いを見せていくのか、そんな戦略について。

「自分の調子がいいときはいいプレーも出るけど、よくないときはプレーもうまくいかないときがあって、それはなんでだろうって、ずっと考えていたんです。特に鹿島に移籍してから。そこに繋がったかなというのは、代表に行って強く感じましたね」

 自分ではコントロールが効かない調子の良し悪しについて、訴える選手は少なくない。体調が悪いわけではないが、感覚的なものがそのままプレーに反映されてしまう。杉岡選手にも、そういった感覚があったようで、それをどう克服していくかを模索していた。

「僕自身、技術が突出してあるわけではないですし、身体能力がすごく高いわけでもない。その個人の能力プラス味方を動かして自分がどうプレーしやすくするか。どういう配置でやると自分の強みを生かせるのかということまでが個人戦術だなというのをすごく感じていて。それをしていかないと自分の良さは出せないし、そこはまだまだだなと思いましたし、逆にそこをもっとやっていこうという新しい課題、もっと上にいくために必要な答えが見つかりました」

 ベルマーレで過ごした3シーズンは主力として戦ったにもかかわらず、鹿島への移籍後は、思ったように出場機会を掴むことができなかった。ところが、期限付きで戻ったベルマーレでは、再び主力として戦えている。そこには、システムと個の相性の良さだけではない、何かがあった。

「鹿島に行って試合に出られずに悩んでいたところや、逆に湘南に来てなぜ自分でも手応えのあるプレーができたんだろうっていうところ、その『なんでかな?』ということが自分の中でわかってきた。それは、システムだけじゃなくて、4バックだろうと自分のやりやすいように、自分の強みを出せるように味方を動かしたり、自分自身のポジショニングをとったりということがすごく大事なんだというふうに感じました。なかなか難しいことですけど、僕の中ではすごく大きなことで、やることがはっきりしたと感じています」

 今回の代表招集で与えられたポジションは、4バックの左サイドバック。鹿島でのポジションと重なっている。また、逆サイドにいたかつてのチームメイト、山根視来選手(川崎フロンターレ)の存在も刺激になった。

「代表の4バックでなかなか良さを出せなかった自分がいたんですけど、そこで逆サイドの視来くんを見たら、すごく考えてポジションを取っていて、ポジショニングについて話すことによってすごく刺激になりました。視来くんもすごく体格に恵まれていたり、技術が突出していたりするタイプではないと思いますけど、存在感はすごくあった。本当に刺激になったし、自分もできるんじゃないかっていうすごくポジティブな刺激を受けました」

 意図を持つことですべてが変わる。

「やっぱり理解していないと動かせないですし、自分に意図がないと動いてくれないですし。それプラス自分のポジショニングによって言えることもあると思いますし。そういうことをもっと考えてやることで説得力も上がると思いますし、そこをもっともっと考えてやっていきたいなと思います」

 プレーや人間性をよく知るメンバーが代表にいたことはプレーのしやすさに繋がることもわかったが、それ以上に時間のない中でも合わせていく適応力の大切さを改めて思い知った。

「心強いですよね、やっぱり。ほとんどが初めて会う選手の中でプレーするよりかは知っている選手がいた方が。話もしやすいですし。町野選手は、僕が覗いたときに顔を出してくれますし、普段一緒にやっている関係性というのはある。だからこそ、それを少ない時間でも作れるというか、動かして作る選手がいい選手だと思いますし、そういう力が足りないし、もっとやらなきゃダメだなと思わされました」

 システムや戦術は違っても、プレーする根幹の部分は、山口智監督が求めていることに共通していると感じた。

「今、智さんに言われてやっていることを考えたら、『繋がりを持ってポジショニングを取れ』とか、すべて繋がっていて一緒かなと思いました。代表は本当に短い時間ですし、ましてや今回は初招集の人も多かった。はっきりしたチーム戦術を共有するのが難しい中で、アピールするとなったら個人戦術だと思うので、湘南とシステムが違うとか求められていることが違うということではなくて、チームで求められていることは代表でもやれたらプラスになることだなというのをより感じました」

 この代表招集で掴んだ経験は、これからのサッカー人生で活かしていく。

「でも、W杯に向けたアピールという、自分を出すということについてはなかなか…。ただでさえ厳しい状況で、次のW杯だけを見たらやっぱり強烈なアピールが必要だったと思いますし、そういう目で見たら本当に全然ダメだったとは思います。だけど、今後のサッカー人生を考えたうえでは、やっぱり行ってよかったなと思います。あきらめるわけじゃないけど、これをいいきっかけにして、また上を目指していけるかなというふうに思います」

 日本代表という、いつもとは違う場所で得た刺激。この、大きな刺激によって、目指す方向が見えてきた。

>勢いから意図へ プレーの質にこだわりたい