ボイス

【ボイス:2022年5月19日】舘幸希選手

勇気を出して
新たな自分を見せていきたい
 今シーズン、クラブはリーグ戦で5位以内の目標を掲げている。残念ながら現状は、その目標への道のりはまだ遠くに感じるが、それでも選手の誰もがファイティングポーズを取り続けている。

「5位以内という目標に対してみんな、シーズン前から前向きに目指してシーズンを迎えました。今は勝てない状況が続いて後ろから数えた方が早いですけど、智さんは『5位以内の覚悟を持ってやろう』と言ってますし、僕たちもその覚悟を持って戦っています。チームとしてやってることは悪くないですし、最後の詰めの甘さだったりというのはありますが、まだここからでも勝ちを重ねていけば絶対に見えてくると思ってます」

 まだまだここからの巻き返しを期する。とはいえ、今後の戦いに向けて希望は持っているものの、楽観はしていない。現状を変え、目標に近づくためには自分達の変化の必要性も感じている。

「いい選手はいますし、5位以内も目指せないことは全然ないと思います。でも、今のまま完成度が上がるだけでその目標を達成できるとは言えない。全員がもう1つ2つ個々のレベルを上げないと5位以内には絶対に行けないというのは、試合を通して感じます。5位以内を達成するには、完成度を上げて、さらに個々のレベルアップも必要だと思います」

 舘選手自身が個人的に感じている課題もまた少なくない。

「リーダーシップを取るところ。声を出すこととか、あとはもっと積極性を出していかないと。バックパスや横パスだと湘南の本来の良さが消えちゃうので、僕からアグレッシブに前に出て行ったり、前にパスをつけたり。ディフェンスでも下がらずに潰していって、そこで自分の良さを出して、自分はこういうことができるといいうところを見せないといけないと思っています」

 積極性は今、もっとも意識しているところ。

「ちょっとアンパイなところがあるのかなっていうのは自分でも感じています。僕から前につけていかないとチームの良さは出せないし、でもディフェンスラインなのでパスミスするのは…。積極性を出しすぎるとバランスが崩れちゃうし、と考えると後ろ後ろになっちゃう自分がいるので、そうするとチームも後ろ向きになっちゃうしっていう。だから、そこのリスクを怖がるんじゃなくて、どんどんチャレンジしていく姿勢というのが大事かなと思っています」

 ディフェンダーとして守備のバランスは崩したくない、でも、攻撃に厚みを加えるには自分自身が積極的に前への意識を高める必要があると感じている。リスクをどう取るのか? そのバランスが悩みの種だ。

「そこのチャレンジという部分でもっとこう、リスクを冒してもいいんじゃないかなというのは思うんですけど、練習でできてもいざ試合となると、プレッシャーもあってなかなかできない。どうすればチャレンジできるのかと言えば、そこはもう成功体験を重ねていくしかないかなと。ミスをしてもいいからチャレンジして積み重ねて、『ああ、こうしたら通るんだ』という経験をしていかないといけないと思っています。まずはチャレンジする度胸をもっと出していかなきゃなって思います」

 ベルマーレは、チャレンジのミスは責められないチーム。「僕自身も他の選手を見て、今のはチャレンジのミス、今のは後ろ向きのミスっていうのはわかる。チャレンジのミスは、全然誰も咎めることはないです」と、舘選手自身もよくわかっている。あとはただただ踏み出すだけ。それが5位以内を目指すチームに必要なレベルアップにつながる最初の一歩なのかもしれない。

「自分のところで攻撃に厚みを持たせられれば、もっともっと点が取れるようになると思う。例えば僕がボールを持ったときに、今まではボランチにつけていたところを、1個前にボールを出してボランチが前向きにプレーできるようにするとか、あとは上がったときのクオリティ、自分がどこにランニングしてサポートするかというところもあります。単純に技術的なところも、いろいろやることはあるなと思いますね」

 そして今シーズン、自身に課しているチームの支えになる選手への成長という課題。

「もうちょっと頼れる男にならないといけないなって思います。たまにいいプレーをするくらいじゃ全然ダメだし、安定してミスのないプレーをしていかないと。もちろんミスがないというのはあり得ないですけど、その数を減らして、チームメイトに、『あいつがいたら絶対に大丈夫』くらいの信頼を持たれるくらいやらなきゃいけないなと思います」

 中堅と呼ばれるキャリアに近づきつつある今、上の世代と下の世代をつなぐことも役割の一つ。

「上と下をつなげるじゃないですけど、下の選手にもどんどんアドバイスして、上の選手にも頼ってもらえるような選手にならないといけないですし、そういう歳でもあり、立ち位置でもある。ただ、そこのコミュニケーションは全然問題ないと思うんですけど、やっぱり頼もしくなるっていうところは、チームメイトを含めて信頼を勝ち取らなきゃいけないなと思っています」

 ここまで歩んできた道のりを踏まえて迎えた3年目のシーズンに期する自分自身への思い。新たな境地へ向けて、まずは勇気を持ってその一歩を踏み出したい。

取材・文 小西尚美
協力 森朝美