ボイス

【ボイス:2019年4月25日】松田天馬選手

甘かったルーキーイヤー
同じことは繰り返さない
 まだ始まったばかりとはいえ、今シーズンの奮闘ぶりにはルーキーイヤーの成長が映し出されていることがわかる。昨シーズンも開幕戦でスタメンに名を連ね、先制点をアシスト。第2節には、プロ初ゴールを決めている。しかし、センセーショナルなデビューを果たしながら、ルヴァン杯のファイナルのほか、何試合かで途中出場・途中交代を経験。天皇杯の2回戦では試合後の監督会見の折、何人かの選手とともに曺監督から名指しで叱責された。最上級の喜びも、苦い思いも、振り幅大きく心に刻んだ1年となった。

「最初の頃は、大学生の頃と似たような感覚で、『楽しく』やっていたと思うんです。でもそんなに余裕はなかったですね。……『いつ外れてもおかしくないな』と思っていたし、何なら少し、『なんで出ているんだろう』という気持ちもあったかもしれないです。そうですね、今思ったらそんな感じだったかもしれない。チームもあまり勝ててなかったんで、気づかないうちに精神的にもプレッシャーというか、結構きつかったですし。連戦で、試合は続いていくっていう、1年通してやってみないとわからない部分が出てきたのかなと思います」

 ピッチに立てば、勝敗への責任をより重く感じるのは当然のこと。そして、勝っても負けても次の試合はスケジュール通りにやってくる。精神的に飽和状態になってもおかしくはない。

「自分の特徴や、このチームでの自分の役割をつかめていなかったのかもしれない。周りと空気がちょっと違うなという違和感は感じていて、その違いがいいのかなと思ったけど、やっぱり近づけていかなきゃいけないものは近づけなきゃいけなかったし、そこは足りなかった。具体的に言えば、『甘い!』ってやつです」

 正式に加入する前の2017シーズン、大学4年生のときには、特別指定選手としてJ2ながら3試合に出場している。毎年、新卒で加入する選手はたくさんいるが、在学中に特別指定選手として登録されるのは、その中でも一握り。他の選手から見れば、順風満帆と言える状況は、プロへの自覚を促すのも早いと思えるが、事情は違ったようだ。

「サッカー選手として『あるべき覚悟』、『プロである』っていうのは、ホントまだまだ。甘かったな。仕事になっていないというか、やろうとしてなかったんですかね。だから、シーズンの途中からは試合にでても、そんなに『楽しい』っていう感覚ではなかったです」

 ワールドカップが開催された昨年は、中断期間が長く、その分試合の予定は詰まり、特に後半はルヴァン杯に勝ち残ることでスケジュールはよりタイトになっていった。息つく間もなく迎えたルヴァン杯のファイナル、松田選手は途中出場したが、わずか16分でピッチから去ることとなった。

「一生懸命やっていたつもりなんですけど、何かまだやっぱりサッカー選手としての覚悟というか、プロとして仕事になっていないというのを曺さんは伝えたかったと思うんです」

 昨シーズン、途中出場・途中交代した試合はルヴァン杯ファイナルを含めて3試合ある。

「最初のときは、戦術的な交代ということを言われて、そんなに重く捉えていなかった。次のときも延長戦までいった試合だったんで、しょうがないかなと思っていた。本当は、そこで何が悪かったのか、考えなきゃいけなかったと思います」

 ファイナルともなれば、相手の必死さもいつも以上。途中交代の選手に託される役割も重い。

「試合に出る前、ベンチメンバーを集めて話をされた。自分自身もしっかり意識づけして入ったつもりだったんですけど、やっぱり準備が足りなかったかなと思います。試合への入り自体は、むしろ余裕を持って、『わぁ、こんな感じか』みたいな感覚だったと思うんですけど、ファーストプレーでボールを取られてしまって。繰り返し言われていた部分だし、展開を考えると失っちゃいけない場面だったのに。大事な交代枠を1枚使ってくれたのにああいうプレーしかできなかったというのがやっぱり」

 冷静に振り返れば、自分が代えられた理由を解説できるほど。

「その前に感じ取る、準備ができる選手が良い選手だと思う。そこはまだ備えていなかったです。そうしたことの重みも経験することでわかるし、意識する重さも違ってくる。そういう部分では確実に成長してるというか、そういうミスはだいぶ減っているんじゃないかと思う」

 すべての経験を糧にして、役割の重さを自覚して、そうして今、シーズンを戦う姿は、誰よりもアグレッシブだ。

「同じことは繰り返したくないなといつも思ってるんです。まぁいろんなことで叱られるんですけど」

 一つ理解して次のステップに進んだかと思えば、また新しく叱られるネタが登場する。しかし、それこそ成長の証と受け止めている。

>熱を持って真剣になるほどサッカーがおもしろい