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【ボイス:2015年5月27日】藤田征也選手 [2]

J1で自分自身が納得するプレーを! あえて選んだJ2への回り道

 ベルマーレのチーム作りにおいて、湘南スタイルを理解し体現できる選手が前年に引き続いてチームにとどまってくれることが最大の補強というのは曺監督の考え方のひとつ。だからこそ、2014シーズンは期限付き移籍で加入していた藤田選手が今季は完全移籍でチームに加わったことは、心強い支えとなっている。

「昨年、チームとしても結果を出せましたし、自分としても試合に出たくて来て、試合にほぼ絡めたというのもあるし、去年1年を通して自分としてもさらに成長できたなという手応えを感じられたので、湘南に思いきって来てホントに良かったなと思いました」

 昨年移籍が発表されたのはJ2リーグの開幕戦が終わった直後の3月4日。1つのポジションを複数人数で競わせる方針の曺監督が古林将太選手の負傷を受けてリクエストした移籍加入だった。

「開幕の前日くらいに話をもらって、開幕の次の日にはこっちに来ていたくらい急な話でした。代理人から電話がきて最初は、『何を言ってるのかな?』『夏の話をしてるのかな?』って思った。その割には急いでるなと思ったら、『すぐ来て欲しいと言われている』って。びっくりしましたけど『すぐ行きます』って言いました」

 即答したのには理由がある。アルビレックス新潟では、思ったような結果が出せない選手生活が続いていた。

「新潟では年間20試合ずつくらい出ていたけど、あまり思ったようなプレーができてなかった。ポジションはサイドバックをやることが多かったんですけど、サイドバックだと攻撃的に思い切ったプレーができなかったというのがあって。良さが出せないと自信もなくなって、余計に消極的なプレーになってという悪循環に陥っていた。それでもオフ明けのキャンプでは調子は良かったんですけど、練習試合などの印象で今年は厳しいかなということを感じてもいました」

 そういった自分の状況とは別に、Jリーグの他チームの試合をテレビ観戦するなかで湘南スタイルにはもともと注目していたという。

「湘南は若いチームっていうイメージがあったし、僕は年齢的に湘南だと上のほうなので、まさか声がかかるとは思ってなかったんですけど、面白いサッカーをしてるので、湘南のサッカーには注目してました。オファーをもらったポジションは自分が一番活きるポジションだと思ったし、あのタイミングでのオファーは本当に必要とされて呼ばれてるということも感じられて、チャンスをもらったのですぐに『行こう』と決めました」

 湘南スタイルに馴染むのも早かった。加入直後の週末に行われた第2節には5分ほどだが、途中出場を果たしている。

「そんなに違和感なく入れたかなっていうのはあります。でも最初の頃はフィジカル的にきつい部分もあって、本当にフィットするまでにはちょっと時間がかかったと思うんですけど、やり方というところではそんなに違和感なく入れたかなと思います」

 昨シーズンは、優勝に加えて、史上最速のJ1昇格1や101まで積んだ勝ち点など、“湘南の暴れん坊”の異名そのままの戦いぶりでJ1昇格を果たした。それは、シーズンを勝ち抜く目標だけではなく、今シーズンにJ1で戦う準備に費やした1年だった。

「去年は勝つのが当たり前みたいな、周りからもそう思われてたし。そのなかでちょっとうまくいかない時期もあった。うまくいかないと言っても、そんなに負けているわけでもない、っていうのがちょっと難しい雰囲気に繋がることもあったんですけど、そういうときでもチームみんなで話し合ったりしながら良い方向に持っていって最後にしっかりシーズンを終われた。あれだけ勝つことはもうなかなかないと思うんですけど、良い経験ができたなと思います」

 2巡目に入るとどのチームも湘南スタイルへの対策をとり始めた。そこをこじ開けていくことこそ、J1の質を求めるチームとしての力となるのだろうが、うまくはめられてなかなか得点を得ることができない試合が続いた時期もあった。

「相手が研究してきてほぼ引いてくるような感じでなかなか点が取れなくなった。負けてはいないけど勝てなくて引き分けが多くなった時期、うまくいってないわけじゃないけど、前半戦であれだけ勝っていたこともあって、勝てないとダメなんじゃないかという雰囲気にチームがなったりもした。
 でもそういうなかでも選手同士で話をしたりしてしっかりブレずに1年間やれたので、そこは良かったと思います」

 2014シーズンの戦いの根幹には、曺監督が指揮を執るチームとしてJ1リーグから1年で降格した悔しさがあった。その悔しさがあればこそ、長いシーズンの間、勝利にこだわりつつもトップリーグのプレーの質を求め続けられたと言える。しかし、藤田選手は2013年の思いを共有してはいない。それでも藤田選手が試合に臨む雰囲気からは、他の選手と変わりないJ1リーグへの思いが感じられた。

「新潟である程度は試合に絡めていたけど、納得できるパフォーマンスを出してはいなかった。みんなも1年で戻るっていう気持ちだっただろうけど、僕自身も1回J2のチームに来たけど1年でJ1の舞台に戻って自分の納得できるシーズンを送りたいという気持ちだった。少し違うかもしれないけど、そういう部分でも違和感なく馴染めました」

 今シーズンは古林選手が復帰し、さらに左右のサイドハーフもできる高山薫選手も加入。ポジション争いは厳しさを増している。

「ポジション争いっていうのは、それがないとやっぱり自分としても成長できないと思うし、試合に出る自信はあった。だからネガティブに捉えずに前向きにやれてるかなと思います」

 成長の確かな手応えを掴んだシーズンを過ごして、名実共に湘南を代表する戦士となった。