会長のPHOTO日記

【会長のPHOTO日記:12月6日】最後のPHOTO日記


良く晴れた広島の空に今シーズンの終了を知らせるホイッスルが鳴り響き、緑の戦士たちが下を向いた。先制しながら追いつかれアビスパ戦のデジャブのように90分過ぎにPKを与え、紫に染まるスタジアムで最後まで選手たちを鼓舞してくれたサポーターに勝点をプレゼントすることは叶わなかった。

2004年に急遽、社長を務めることになった。サッカーをやったことのないうえに器用に仕事ができない自分に何ができるかを考えた時、現場は大倉や水谷に任せサポーターや支援者、地域との絆づくりを担うのが自分の仕事だと認識した。そしてそれを少しでも前進させるために始めたのがフォト日記とクラブカンファレンスだ。

当時の年間予算が7~8億円、強化費で言えば3.5~4億円。現在のJ3 クラブの予算だ。当然だが連戦連勝とはいかない。それでもクラブは上を目指すんだというメッセージを、笑われても発し続けなければ単なる詐欺集団になってしまう。普通の法人と違いスポーツクラブは利益を出すために存在するのではない。勝利を生み、感動を生み、地域に貢献する。その当たり前の仕事に皆様から浄財をいただいている。その我々の義務を無骨ながら続けていますというメッセージカードはいつの間にか22年の時を刻んでいた。

ホームゲームでは後半はメインスタンドホーム寄りの上段で試合を見る。このルーティンワークはより近くでスタンドの反応や声を拾うために始めた。発せられる声援に混じる声を聴くためだ。
アウェイでは用意されたVIPルームには入らない。アウェイ側のベルサポの様子を吸収するためスタンドのよりベルマーレ側をふらつく。そして勝負の結果を勘案しフォト日記のコメントを考える。アウェイではスタンドをふらふら移動しているので座席案内のボランティアの方に怒られたのは一度や二度ではない。

身内からも何度も怒られた。大倉、曺、坂本。「選手たちが納得していませんよ」「チーム批判に聞こえます」「サポーターに寄りすぎです」じゃあ今年で止めるよと返すと止めないでくれと返ってくる。いつの間にか間接的ではあるけど身内の腹の中をぶつけ合うツールにもなっていた。素敵な案や解決策を並べる会議ではないけど、逃げずに議論をする文化は根付いていったんだと思う。

そんな内部のやり取りは別にして何度も今年限りと思ったことは多々だ。そもそも3行から5行で相当数の発信を続ければ言葉の引き出しも空になる。
ましてや文字数の少ないタイトルは何回もかぶっている。リーグ戦、カップ戦を延べ数えれば1000回近いのだから。皆さんも「また同じこと書いている」と何度も感じたと思う。しかし同じでもその時の想いを伝えることは止められないと続けてきた。

11月末、将来に関する明確でない経営方針に賛同することは、サポーターや支援者の長年の支援に背くことになると考えた。湘南の26年の歴史と49.998%の株主の代表として同意することなく会長職を解任されることが筋だと決断した。
従ってこの日記はこれが最後の発信になります。22年間、ありがとうございました。

最後の地、広島はベルマーレと縁の深い場所だ。サッカーを深く愛し私財を投じベルマーレを生み出した藤田家創業の地。ベルマーレ平塚の最後の社長でクラブ存続のために尽力された重松さんの生まれ故郷であり眠る地。この地で最後の日記を書けることにありがたい運命を感じる。

重さんの声が聞こえる。
「あんた、また降格かい。それで終わりかい。
闘うじゃろ、闘いんさい。それが、あんたらしいじゃよ」

2025年12月6日
ベルマーレ誕生の地より  取締役会長 眞壁潔