SHODAN -湘談-
「一緒に地域を盛り上げていきたい」
これまでの歴史を踏まえ、これからに想いを馳せる

クラブを支えるパートナー企業との対談企画「SHODAN-湘談-」。今回のゲストは、湘南地域に根差して今年設立30周年を迎える株式会社マッケンジーハウスの代表取締役・大久保英二さん。オフィシャルクラブパートナーになった経緯やご自身の経歴をひもときながら、湘南ベルマーレの坂本絋司代表取締役社長と語らいました。年齢も経歴も近しいトップ同士の対談は、互いに理解を深め、地域に対する想いをあらためて共有する、とても有意義な時間となりました。 以下敬称略
――マッケンジーハウスさんが湘南ベルマーレのオフィシャルクラブパートナーになられたのは2019年にさかのぼります。
大久保 世の中がコロナ禍に見舞われる1年前からですね。今年で7年目になります。
坂本 ありがとうございます。でも正直、もっと長くご支援いただいている気がしていました。
――パートナーになったきっかけを教えてください。
大久保 最初は社内のささやかな食事会の席だったと思います。ベルマーレさんのことが大好きな社員が、どんな形でもいいからクラブのスポンサーになれないかと言い出したのがきっかけでした。すると、「私もベルマーレ好きです」という社員がじつはけっこういて、さらにお客さまにもたくさんいらっしゃることが分かった。私どもの仕事はベルマーレさんのホームタウンと重なる平塚や秦野、小田原、厚木がメインのエリアになるので、それならやってみようかという話になり、ベルマーレの営業の方に来ていただきました。そうした経緯で、最初はバックスタンド最前のバナーと看板を出させていただきました。
――つまりマッケンジーハウスさんからお声がけをされた。
大久保 そうですね。社内的に盛り上がって、こちらから「どのようなスポンサードの形がありますか?」とクラブにお伺いしました。
坂本 非常にありがたいお話でした。マッケンジーハウスさんの存在はもちろん知っていましたし、私も現役を引退した当初は3年半にわたり営業をやっていたので、地域を回るなかで、なんとかお付き合いできないかと思っていたんです。そのときは叶わなかったですけど、ベルマーレを選んでくださったことをとてもうれしく思ったことを覚えています。
――パートナーになって、周囲の反応はいかがでしたか?
大久保 クラブを支援していることが表に出ることによって、こちらから伺わなくても、「じつは自分もベルマーレ好きなんです」という声がより届くようになりました。また、うちがベルマーレさんのスポンサーをやっていることを知って、「それならぜひ」と、熱心にクラブを応援している取引先と大きな仕事がまとまったこともあったんです。
坂本 我々としても、ものすごくうれしいお話ですね。
大久保 そういう出来事があって、地域に根付いているベルマーレさんの力をあらためて実感し、もっと支援していこうと、その後さらに規模を上げていったという流れですね。
――その後、オフィシャルプレミアムパートナーになるに至った経緯を教えてください。
大久保 2019年のバナーと看板に始まり、翌2020年にはウォーミングアップのウェア(鎖骨)をご支援しました。2021年の途中からユニフォームのパンツを、2022年からユニフォーム(背中下)をスポンサードさせていただきました。
坂本 まさにコロナ禍で、クラブとしてはすごく大変なときだったんですよね。Jリーグの試合が延期となり、再開されても観客数が制限されるなど興行としてはかなり厳しい状況でした。そんな我々がいちばん苦しい時期に助けていただき、ほんとうにありがたかったですし、そこからさらに年々グレードアップしていただいています。
大久保 たしかにコロナ禍はどの業種も大変な時期でしたね。うちも建築に関しては為替や輸送の問題で材料の高騰などがあり、厳しかったです。ただ、不動産のほうは思いのほか落ち込まなかったので、ベルマーレさんからお話をいただいたときに、「よし、じゃあもう一歩進んでみよう」と前向きにお受けすることができました。でもよくよく立ち返ってみると、周りのパートナーさんは大きい会社ばかりで(笑)。頑張らなければいけないと気を引き締めつつ、「我々もこういうことができるぞ」と、他社さんに負けないような支援をしっかりしていきたいなと思っています。
――プレミアムパートナーになったことで実感する変化はありますか?
大久保 湘南エリアで不動産や住宅を探している方にはマッケンジーハウスの名前を知っていただいていると思いますが、そうでない方の認知度はまだまだだったと思うんですね。でもプレミアムパートナーになったことで、弊社の名が多くの方々の目に触れ、「マッケンジーハウスってなんだろう」と興味を持っていただき、ほかの業界の方からもお声がけいただいたり、異業種とのパイプが繋がったり、間違いなくネットワークが広がっている。その変化は非常に大きいと感じますね。
坂本 湘南地域に長く根差し、志を同じくしている我々としても、ハブとなってマッケンジーハウスさんのコミュニティづくりに少しでも貢献できているのであれば、うれしく思います。
――マッケンジーハウスさんは今年設立30周年を迎えています。会社を長く続けてこられた理由は何だと考えますか?
大久保 私は在籍20年余りなので、創業当時のことは分からないですけど、会社を30年続けるのはなかなか大変なことだと率直に思います。そういうなかで、うちがつねに成長しようとする姿勢でいられるのは、会社の仕組みもあると思っています。というのは、弊社は社長の任期が基本的に5年と決まっているんですね。つまり5年ごとに社長を代えて、会社をつねに新陳代謝させていこうと考えている。設立当初は5年で交代ということはなかったんですけど、途中から任期を設けて、30年の社歴で私がもう4代目になる。若いほうが考え方も柔軟ですし、とくに最近は時代の流れが早いので、そのシステムは変化の激しいいまの時代に合っていると思う。それが会社が長く続いている理由のひとつかなと思います。
坂本 大久保さんが社長になられたのは本当に最近ですね。
大久保 今年の4月からです。なので、いかに会社を成長させられるか、次の世代にどう引き継ぐか、幹部を育て、会社をブランディングすることを、私もこの5年間しっかりやっていこうと思っています。
坂本 私もベルマーレがJリーグ加盟30周年を迎えた2023年に代表にならせてもらったんです。
大久保 あ、似ていますね。
坂本 大久保社長とは同世代だと思いますし、経歴も似ている部分を感じます。自分が立ち上げたわけではない、長く続いている会社の歴史をどのように次世代に繋いでいくかといういまのお話ですが、社長を任されたときはどんな心境でしたか? 私は正直、光栄だけど複雑というか、自分で大丈夫かなと思ったところもあったんですよ。
大久保 分かります。就任してまだ3カ月ほどですが、私もそれは思います。さらに言えば、会社に入ったときに自分が社長になるなんて思ってもいなかったんですよね。いち社員として入社し、仕事がおもしろくて頑張った結果、社長という立場をやらせていただくことになった。また、いま坂本社長がおっしゃったように、自分でいちから立ち上げた会社ではない分、30年で培ってきたイメージやブランド力、ルールやしきたりがあるので、それを残しつつ、自分の色も入れながら経営を加速させていかなければならない。それってやりづらいのかなと最初は思ったんですけど、逆にそういうテーマがあるほうがやりがいは増すので、マッケンジーらしさを残しつつ、どれだけ私の代で加速させられるか、いかによりよいものをお客さまに提供できるか、いまは「やるぞ」という気持ちです。
坂本 ああ、まさに同じですね。我々のクラブにも歴史があり、支援者の方々やサポーターなど応援してくださる方々がいて、培ってきたものを壊さずにクラブを成長させなければいけない。そのプレッシャーが就任当時はすごくありました。それで僕は最初、空回りしていたと思います(笑)。ある日から社長と呼ばれるようになり、自分の言動や行動がベルマーレのそれとして見られることに対してかなりプレッシャーを感じていたのだと、振り返って思います。
――歴史を大切にしながら未来に向かって発展していくというスタンスは共通していますね。
坂本 そう思います。私もベルマーレが好きだからこそ歴史を大事にしたいし、よりよくするためには変化も必要だと考えている。最初は自分のなかでそのバランスが難しかったんですけど、いろんなアドバイスや周囲の声に耳を傾けながら、1年、2年とやっていくうちに、やっと少し分かってきたように思います。
――先ほど大久保さんのお話に出てきた「マッケンジーらしさ」とはどんな言葉になりますか?
大久保 お客さまお一人おひとりの想いやご希望に寄り添うことが私たちのいちばん目指しているところであり、強みであり、ひいてはマッケンジーらしさだと考えています。たとえば戸建てで言うと、一般的にはある程度形が決まっていて、外観を見ればどこのメーカーさんの建物かだいたい分かると思います。でもうちは、「これがマッケンジーハウスの商品です」とひと目で分かる特徴より、お客さまのイメージを形にする柔軟性を大事にしている。なぜそれができるのかといえば、不動産や建築の各分野のエキスパートが自社におり、お客さまと細部まで相談しながら進められるからです。そのため、定型ではなくご希望に沿った家をつくることができる。そうしたお客さま第一主義の柔軟性がマッケンジーらしさだと思っています。
坂本 依頼する側からするととてもうれしいですけど、ビジネスとしてはあまり効率がよくないのではないですか?
大久保 そうですね。コスパやタイパが重視される時代の流れには逆行しているかもしれません。実際、いまは効率化のために建売住宅や規格住宅しか扱っていない会社さんが多いです。もちろんうちも扱ってはいますが、それは3割程度で、約7割はお客さまと相談しながら一から建てていく注文住宅になっています。たしかにビジネスとして効率だけを考えたら違うやり方もあるかもしれませんが、お客さまに喜んでいただけることも多いですし、そのご縁で別の方をご紹介いただくこともある。家を購入されたご夫婦の息子さんが新たに買ってくださったこともありますし、お客さんが社員になったパターンもありますし。
坂本 え、というと?
大久保 いま役員なんですけど、もともとは20数年前にうちの家を買ったお客さんだったんですね。その後うちに入りたいということで営業マンになりました。施工している職人さんのなかにも、うちで家を建ててくださった方は多いですね。
坂本 それは素敵な話ですね。
大久保 決まった形の家を量産するのもビジネスのひとつのやり方だと思います。ただ、それだとお客さまとの繋がりも一瞬にして終わってしまうんですね。私たちはお客さまのライフプランまでお伺いしたうえで、たとえば10年後を見据えて間取りを考えたり、ご相談に乗らせていただいているので、家を建ててお渡ししたあとも繋がりを大事にしたい。なにより、一生で一度あるかないかの大きな買い物なので、どうしようかな、ああしようかな、と考える時間も含めて、ご自身のお家づくりを楽しんでいただきたいですね。
坂本 お話を伺っていると、学ばせていただくことがたくさんあります。本当に家を建てるって人生の一大イベントですよね。
大久保 そうなんです。その決断をいただくのはとても大きなことですし、我々もすごく責任を感じているところです。
坂本 効率や生産性が重視される時代の流れに逆行してでも、お客さまの希望を叶えるためにしっかりと寄り添う姿勢が、マッケンジーハウスさんが支持されている理由なのだとよく分かりました。
――「楽しむ」というキーワードもベルマーレに通じるところがありますね。
坂本 そうですね。家を建てることを想像するとワクワクしますよね。そのワクワク感を提供したいという意味では、業態は違いますけど共通していますし、お客さま第一の姿勢は我々も大事にしていきたいと思っているところです。パートナーとして一緒に手を携えていくうえで学びにもしたいと思います。
――平塚をはじめ、湘南地域のどんなところによさを感じますか?
大久保 ひとくちに「湘南」と言っても、藤沢や鎌倉などはカルチャーが成熟し、人気がある一方で、平塚をはじめ、西湘のよさはあまり知られていません。私は平塚に住んで20数年になりますが、海、山、川と自然が身近にあり、ひとがみんなあたたかい。小田原や秦野も含めて街のポテンシャルはすごくあると感じているので、そうしたまだあまり世に出ていないこの地域のよさを、もっと発信していきたいと思っています。
うちのお客さまの層で言うと、平塚に移住してこられる方は3割ぐらいいらっしゃいますが、私はもっとこの地域にひとを呼びたいと考えている。というのも、藤沢や鎌倉のように魅力が伝わり人口が増えれば、このエリアの経済も活性化しますし、ひいては弊社のお客さまが増えることにも繋がる。なので、地域の魅力を発信し、盛り上げる取り組みに今後力を入れていきたいと私は思っています。
そのためにはベルマーレさんの存在が不可欠です。J1クラブは全国に20チームと限られているなかで、平塚に本拠地を置くサッカーチームがあることはすごく誇りに思いますし、ベルマーレさんにハブになっていただき、この地域を盛り上げることができれば、みんながウィンウィンになる。それが支援させていただいている理由のひとつでもあります。
坂本 非常に心強いです。我々も役割を果たすべくしっかりやっていかなければいけないとあらためて思います。
――ベルマーレにどんなことを期待しますか?
大久保 私どもには、未来を担う子どもたちを育てたいという想いがあり、子どもたちに夢を持って大きく育ってほしいという願いから、微力ではありますが、子ども食堂を運営させていただいています。またベルマーレさんと一緒に地域の子どもたちをホームゲームに招待する「湘南こどもみらいマーレ」もやらせてもらっていますが、やはりベルマーレさんという母体があることによって規模感も変わりますので、そうした地域の子どもたちに向けたイベントをさらにやっていただけると非常にありがたいなと思います。もちろんチームが勝つことも、地域が盛り上がるひとつの要素としてあると思っています。
坂本 まさしくその通りで、勝利を届けて地域を元気にすることはスポーツクラブとしてやらなければいけないミッションだと常日頃から思っています。チームが強いほど影響力は増すと思うので、結果にはしっかり向き合っていきたい。また大久保さんがおっしゃったように、地域の未来を担うのは子どもたちです。地域を支える次世代のSDGs/サステナビリティ人財育成事業「サステナトレセン」も昨年始めましたし、今後も我々の活動に共感していただける企業さまと一緒によりよい地域づくりを加速して進めていきたいと思います。
――6月28日の横浜FM戦は「株式会社マッケンジーハウススペシャルデー」として行なわれます。マッケンジーハウスさんのスペシャルデーは勝率がいいそうですね。
大久保 2022年から3連勝中です。
坂本 振り返ると、マッケンジーハウスさんのスペシャルデーを境にチームは良い流れになっているので、ぜひ力を貸してください(笑)。
――今後どのようにベルマーレと手を取り合っていきたいと考えていますか?
大久保 今日こうしてお話をさせていただいて、会社として考えていることや目指している部分が非常に近いと思いましたし、エリア的にも重なっているので、今後も一緒に地域を盛り上げていきたいと、よりいっそう感じているところです。地域を耕すことができれば、我々のお客さまはもちろん、ほかの企業さんにとってもいいことだと思います。うちだけで動いても規模的に限界がありますが、知名度の高いベルマーレさんを母体として発信すれば、より効果が期待されますし、私どもも一緒にこの地域を盛り上げたい。そう思っています。
坂本 会社ですからもちろんビジネスは大事だと思いますが、利益よりも、まずはこの地域のためになることをする、それが最終的に自分たちのもとに返ってくるという考えをお持ちなのだと、今日お話を伺っていて感じましたし、すごく共感しました。一方で、こんなに想いを持って地域のことを考えてくださっている企業さまに対して、我々はまだまだじゅうぶんなご提案をできていない部分もあると感じました。我々のリソースを活かし、皆さんをどんどん巻き込んでいくような積極的な姿勢がもっと必要だと思いましたし、マッケンジーハウスさんのような企業さまのことを発信していくのもベルマーレの役割です。今回こうして対談させていただき、非常に有意義な学びを得ることができました。
大久保 これまでパートナーとしてご挨拶することはあっても、なかなかここまで深く坂本社長のお気持ちを伺う機会はなかったので、私も非常に有意義に感じています。年齢も、また社長になった境遇にもすごく親近感を抱きました。地域を盛り上げていこうとするときに共感してくださる会社さんはたくさんあると思いますし、地域のポテンシャルは高いと思うので、今後もベルマーレさんを中心にみんなで取り組んでいけたらと思います。
坂本 ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。