ボイス

【ボイス:2023年5月11日】平岡大陽選手

湘南での活躍のその先に
パリ五輪も視野に入れて
 3月の代表の試合が開催されるリーグ戦中断期間にU-22日本代表メンバーに選出されたのは記憶に新しいところ。昨年もU-21代表に招集されたが、このときはキャンプが行われただけ。今回はヨーロッパに遠征し、U-22ドイツ代表、U-22ベルギー代表との親善試合が行われた。

「世代別代表は、小中高と考えたことがなかったし、対戦相手に代表の選手がいたら、『すごいな』と思いながら見てましたけど、いざ自分がその立場になったら何もすごいと思わへん。『入ったぞ!』みたいのは全然ありませんでした。でも実際にチームメイトと練習したり、ドイツとベルギーと試合して、本当に情けないというか、実力不足を痛感させられた10日間でもあった。また新たな、種類の違う、挫折じゃないけど、もっと頑張らなあかんと思わされたキャンプでした」

 年代別代表は、同年代のトップレベルが招集されるもの。常連の選手もいれば、成長期を経て入れ替わって招集される選手もいる。平岡選手が一番最初に呼ばれたのは高校3年のとき。その後、昨年のU-21代表、そして今回に至る。

「ずっと代表に呼ばれているような選手は発信力があった。サッカーのピッチ上、ボールを扱う以外のところの声かけとか、試合中の指示、コーチングの声とかはやっぱりすごいなって。実力的にも常連で呼ばれているような選手はやっぱりすごい。けど、全体的に見て、技術とか、実力がそんなに劣ってるとは思わへんし、ひっくり返すチャンスもあると思う。でも、自分も全然チャンスはあるけど、『なんで俺、これくらいしかできへんねん』っていう、自分への情けなさを感じることが多くて」

 「ひっくり返せる差」と言いながら、自分へかける言葉は厳しい。それは、親善試合とはいえ、ヨーロッパの同年代の選手との試合を経験できたことも理由の一つだろう。

「海外の選手と初めてちゃんと試合をして、適応とか慣れとかもあるとは思うけど、ドイツもベルギーもフィジカルも違うけど、速さとかもこのレベルでやるんやったら早く追いつかないと置いてかれるぞって感じでした。普通に実力不足やと思いましたね」

 長い時間をかけて作り上げるクラブチームとは違う代表チーム。いつもと違う仲間とチームを作り、いつもと違う監督が、いつもと違うシステムで指揮を執る。しかも短期決戦。代表に呼ばれ慣れている選手は、こうした状況への適応力も高い。それはどこの国の選手も同じ。

「そういったところも初めての経験で、行ってすぐ『このフォーメーションで』『このコンビでやるから』みたいな。それに順応できる選手が一番いい選手なので、そこのレベルに達してなかった自分がいたのは事実。そこを上げていく作業は必要かなと思います。でも、代表活動が毎月あるわけじゃないから、適応する力を上げていく作業を同じ環境でやることはできない。じゃあ何が大事かっていったら今までやってきたことを湘南でやっていく。1年目2年目で背伸びしすぎて特徴を忘れたみたいに、代表に行ったからといって湘南でやってきたことを疎かにするわけじゃなくて、やっぱり湘南でやってきたことがあるから代表に行けているので、湘南でやってきたことを絶対に続けていく。プラスアルファ、何を感じたとか、強度とか判断スピードとかクオリティのところが足りなかったと思うなら足していく作業が大事かなと思います。日本にいても海外に行っても、自分の課題って変わらない。それを強烈に味わわされました」

 しかし、その体験の強烈さが成長をより促す糧となることも多い。代表にいくということは、刺激も多くもらえるということ。そこまで積んだ努力をさらに早く強力に押し上げていく力にもなるはずだ。

「いろんなことを感じられたことは大きいけど、それを成長に繋げられるか、ここからは自分次第。いずれにしろ、このタイミングで感じられたのは大きい。常連で代表に入っている選手は、そういったことを常々感じられるんだって考えたら、やっぱりいい経験ができてるなって思いますね」

 今回の招集は、特に自クラブで活躍してきた実績が認められたものだろう。
 
「間違いなくそうだと思います。だからこそ、代表に入りたいとは思うけど、僕の中では別にそこが目標になってなくて。湘南でいいパフォーマンスをして試合に出て活躍して、というほうが先。その先にやっぱりそういうところに呼んでもらえたら、湘南でやってきたことを出すだけなので。固執しすぎてるわけではないかなと思います」

 パリ五輪を目指す代表も視野に入れておきたいところだ。

「行きたいとは思うけど、本当に行くならこの1年で急激にパフォーマンスを上げないといけない。海外遠征して試合をしたのは本当に初めてだったので、このままじゃダメですね、さすがに。強度もそう、全然違う。あとは判断のスピード。やっぱりそこかな」

 「経験を成長に繋げられるかは自分次第」と言ったのは、まさに平岡選手自身。これからどんな成長を遂げるのか、どんな未来を勝ち取るのか、この先の道のりを見る楽しみがまた大きい。

取材・文 小西尚美
協力 森朝美