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【ボイス:2015年9月4日】大槻周平選手 [4]

全員が一体感となる湘南スタイル その楽しさが走る続ける原動力に

 今シーズンからJリーグが公開しているトラッキングデータの中に選手個人の走行距離やスプリントの回数がある。ベルマーレではスプリント回数で抜きん出ている高山薫選手の記録がよく取り上げられるが、大槻選手の記録もかなりのもの。特に走行距離はフル出場した試合では高山選手と並ぶ、あるいはそれ以上の記録も残る。また、終盤に交代している試合であっても、チームの上位にいる試合が多い。ピッチに立っている間は例え試合の終盤であろうと、攻守のスイッチ役を担い続ける。

「自分からやるっていうか、イヤイヤやっていたらたぶんあんなに走れないと思うんですよね。今のサッカーが楽しくて、だから走れるんだと思う。人にやらされてるのと、自分から走るのでは走る勢いも全然違う。ホント、このサッカーが楽しくて走れていると思う。体力には自信があるんですけど、まだまだなんで、もっともっと体力をつけたい」

 「このサッカーが楽しい」と感じる湘南スタイル。大槻選手にとっての魅力は

「やってるときはキツいですけど、前から守備して奪えたとき、すぐに攻撃に出られるし、攻撃してても横からどんどん人が出てくるし、サポートも多いし、自分の中では本当にやりやすい。僕、そんなに上手い選手でもないし、これまでも全然騒がれたこともないですし、だからみんなの力を借りて、初めて僕が活きるのかなと思います。2、3人で攻撃できるチームもあるけど、ベルマーレってそういう飛び抜けた有名な選手はいない分、みんなでやる、一体感を持ってやるっていうのが僕は好きです」

 どれだけの走行距離を記録しても、自分は「まだまだ」と刺激になったのは、第2ステージまでのインターバル期間にアジアツアーで来日して川崎フロンターレとプレシーズンマッチを行ったドイツ・ブンデスリーガのボルシア ドルトムントの戦いぶり。テレビでの観戦だったがプレーの質の高さに目を奪われた。

「守備も攻撃もそうなんですけど、ドルトムントの選手はあれだけ走ってもパスがズレないとかパススピードがすごいとか。走りながらも質の高いパスとかシュートの精度とかっていうのを僕たちは求めているんで、だからまだまだ守備をしないといけないし、攻撃もまだまだ質を上げていかないと、上にはいけないのかなと思ってます」

 曺監督も「サッカーに必要な技術とは、本来どういうものをいうのか?」という疑問を常々投げかけている。そういった際によく例に挙げているのがブンデスリーガのドルトムントやバイエンルだ。ブンデスリーガで公開されている走行距離やスプリントの回数などのデータをはじめ、ヨーロッパの過酷な試合日程やそこでの勝率など、常に基準を世界に求めて選手に話をしている。

「やっぱり試合に使える技術が一番大事だと思う。ただ上手いだけじゃダメ。サッカーの試合の中で活かせる技術を身につけないといけないと思ってます」

 上を見る向上心もさることながら、「気持ちだけ」でサッカーをやっていたと言う大槻選手がサッカーに必要な要素を一つひとつ丹念に求めていることに驚く。

「僕は大学の時は全然ダメというか、そんなに考えることもなくて、曺さんに出会って技術とか、かなり教え込まれて、だからプロになってから技術面では相当上がったと思います。もう、かなり怒られたりもしたんですけど(笑)。ホント、前は気持ちだけでサッカーやってたんで」

 そうやって積み上げてきたことが自信になっている。だからこそセカンドステージの目標は、大きい。

「なるべく上に行く。ACLを狙える位置に居ますし、全然上に行けると思うんで、なるべく上の順位で終わりたい。
 個人的には、点を取るのもそうだし、チームに貢献するのが大事だと思うんで、守備でも攻撃でもチームのためにやり続けることですね」

 世界レベルを自分たちの基準して、選手たちは目標を掲げている。J1に定住することを目標に掲げたシーズンにどこまで行けるのか、その道程とともに結果を見届けたい。

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取材・文 小西尚美
協力 森朝美、藤井聡行