ボイス

【ボイス:2017年8月25日】山田直輝選手

昇格と共に自分のサッカー人生も占う年
今シーズンにかける思い
 期限付き移籍で3シーズンに渡る在籍は稀。今シーズン、そういった状況でもさらに移籍期間を延長したのには、やはり理由がある。
 
「自分が所属していた昨シーズンに降格になってしまって、そのままチームを去ることはできないなって自分の中で思ったんで。今年は、何としてもJ1に昇格させると思って残りました」
 
 そうはいっても戦うステージを下げる選択は、サッカー選手にとって難しいこと。強い思いがあったからこそできた選択とも言える。
 
「このチームにいれば人間的にもサッカー選手としても、成長できると思っているんで、それだったらJ2っていう舞台でもこのチームでやる価値っていうのは、すごくあると自分は感じた。
 J2自体に抵抗はなかったですね、話もよく聞いていましたし、J2で試合をするのもおもしろいよっていう人もいましたし。もちろんJ1でできるならJ1でやったほうがいいよという人もいましたけど。正直、J1の舞台は捨てがたかったけど、最終的にこのチームに残った判断というのはやっぱり自分がいたシーズンに降格させてしまって、J1に戻るなら今年しかないと思ったから。そうなったときに自分が力になれたらいいなって気持ちが一番大きかったですね」
 
 ベルマーレで3シーズン目を迎えた山田選手は、J1昇格に向けて先頭に立つこともさることながら、ベルマーレのスタイルを体現し、さらなる深化をも担う。しかし、3年間ベルマーレというクラブに在籍することで見えているものもある。
 
「選手の入れ替わりはすごく多いですけど、芯があるチームなので、そんなに心配はしてないっていうか。監督が変わると違うサッカーをするクラブもあるなかで、多分湘南は何年後、何十年後もこういうサッカーをやるんだろうなっていう芯がある。だから選手が変わっても伝える人がいれば、そんなにブレることはないと思いますけどね。鹿島(アントラーズ)が監督が代わってもスタイルは変わらないように、湘南のスタイルも何年もこのスタイルで続いていけるんじゃないかなって気はするんで」
 
 それでも昇格するのに今年は逃せないと考えている。なぜなら、J2リーグの怖さは一筋縄ではいかないことをすでに体感しているから。
 
「J1でやっていた経験をチームが活かせるのは1年間だと僕は思うんです。だから今年J1へ上がれないと、J1への熱が下がったり、『上がれないんじゃないか』という弱気が出たりする気がする。僕もJ2は初めてなのでわからないですけど、感覚的に。やっぱり降格した翌年の1年が一番J1に帰れる可能性が高いし、そこを逃すと難しい。今年しっかりJ1に上がらないと、その先はわからない。だからこそ僕は今年こそ、勝負の年だと思ってやってます」
 
 また、1年でのJ1復帰を期するチームに、自分自身の行く末をも重ねている。
 
「チームの昇格という意味でも、自分の年齢的にも今年活躍できなければ、サッカー選手として先はあんまりないなと思っている。27歳になったし、もう若手じゃなくて中堅、もしくはそれより上っていう歳なんで。高校を卒業したときに27歳の自分はバリバリやっていると思っていたんで、今年1年間バリバリできなかったら、この先は難しいなと。そういう意味で個人としての勝負の1年でもあるという感じです」
 
 ここまでの自己評価は、ほんの少し厳しい。
 
「今のところは試合も出させてもらっているんで。ただまだプレー内容は満足できないところはあります。全体的には思い描いていたより上まではいかないですけど、下でもない。プレーに関しては、思い描いていることよりちょっと劣ってるんで、後半戦で貢献していきたいなと思います」
 
 何が劣っているのかといえば
 
「シンプルにゴールに関わる数がちょっと少ないなっていうか。チームの勝利のために動けているなと思いますけど、チームの勝利のためとはいえ、前線の選手なんで、もっと点を取らないといけないなと。直接でも、じゃなくてもいいですけど、1試合平均、やっぱりチームで1.7~2得点くらいは入れたいなと思っているんで、そこにもっと貢献したいと思います」
 
 複数得点で勝負をつける、そんな試合は確かに今のところ多くはない。
 
「そこだけにこだわるわけではないんですけどね。このチームは、前線が点を取らないとダメ、守備は後ろが踏ん張らないとダメっていうチームではなく、前線も守備をして、最終ラインも攻撃をするチームなんで」
 
 もともと惜しまず走る選手ではあったが、それにしても今シーズンの山田選手は試合の間中、忙しい。大概の試合でフォワード登録で出場しているが、最前線にも最終ラインにも顔を出す。もちろん運動量が豊富なのは、山田選手一人ではない。それでもその神出鬼没な走力に目を奪われる。
 
「ポジションはあるんですけどね(笑)。でもそれが、チームのやり方ではないですけど、僕がここに来て身につけた、勝つためにすべきことなんで。
 サッカーは、相手より点を取って、相手より失点しないほうが勝つ。相手がボールを持っているときはなりふり構わず守備をするっていうか、ゴールを守る。結果、相手が9割ボールボゼッションをしていても、得点が1対0でも勝っていれば勝ちなんで。そういう泥臭く守って、泥臭く点を取るってことができるようになったかなって思います。だからどうしても守りたいときに僕が最終ラインまで帰っていたりするんだと思います。点を取りたいときにバイア(アンドレ バイア)がペナルティエリアに入って来たり(笑)」
 
 勝つために。結果はどうであろうと、目的はチームの勝利。そのために一人ひとりがすべきことをしている、ただそれだけだと山田選手は言う。
 
「『なんでそこにいるんだよ!』って思いますもんね。だから『取られたら走って帰ればいっか』っていう感じ。『うわ、取られちゃったじゃん! じゃあみんなで帰んなきゃ』みたいな。
 みんなでやってる感が楽しい。だから勝った試合は、疲れてますけど、すごくみんなで喜べる。ただ負けたときはみんなが暗い。誰一人、自分の責任じゃないと思っている選手がいないんで。逆に勝ったときは、みんなが自分のおかげって思っている。いいチームなんですよ、ヒーローインタビューなんて受けてるのには、『なんでお前なんだよ!』みたいな(笑)」
 
 勝っても負けてもチームは変わらず一体。それこそがベルマーレの強みだろう。

>短いようで長いと感じる、今シーズン チームへの責任を感じればこそ