ボイス

【ボイス:2016年10月21日】三竿雄斗選手

湘南スタイルの継続と深化を担い
練習から体現することこそ役目

 副キャプテンを引き受けるにあたって特別に意識するものはなかったとは言いながら、自分自身に託された役割については考えていた。
 
「自分のプレーで基準を作るというところを練習から意識してやろうと思っていた」
 
 クラブにとっても挑戦であった2年連続でのJ1残留を果たした昨シーズン。オフには、曺貴裁監督とともに湘南スタイルを築き上げてきた選手のなかでも中心的な役割を果たしてきた何人かが新たな道を求めて移籍を選択した。そうして選手が入れ替わるなか、湘南スタイルの継続と深化を担う役割を自らに課したのだ。
 
「選手が結構入れ替わるなかで、自分はやっぱりベルマーレで3年目だから、ベルマーレのサッカーというものを体現しなければいけない思う。曺さんと一緒に目指すもの、チームがやらなきゃいけないことを自分がプレーで示していかなきゃいけない」
 
 三竿選手がここまで主に担ってきたポジションは3バックの左。最終ラインに居ながら攻撃となれば一つ前のポジションの選手を追い越し、相手陣内深くサイドをえぐってクロスを上げたり、コンビネーションでボールを受けて自らシュートを放ったり、ディフェンダーでありながら攻撃的なシーンにはいつも絡んでいる。攻守に渡ってアグレッシブな姿勢を見せるそのプレーは、まさに湘南スタイルを象徴する。
 
「今の3バックが攻撃的な戦術ができるのは、一昨年自分がやっていたことが少なからずあると思う。今シーズンは、そういうところをより出して湘南のサッカーというものを見せつける、見ている人たちにわかってもらえるように体現するっていうのは、役目だと思う。そういうところを大事にしてきました」
 
 結果としてなかなか勝点に結びついていないが、曺監督5年目のシーズンもまたさらなる深化を目指して積み上げられている。
 
「曺さんもよく言いますけど、やっぱり同じことをやっているだけじゃダメだし、常に新しいことを練習からどんどんやっていこうというのは感じる。2年前より確実にしっかり繋いで前に行くという意識だったり、切り替えの早さだったり、攻撃のパターンだったり、守備の細かい戦術のところだったり、そういうところは確実に増えている。単純にポジションやフォーメーションにしても、2年前は4バックなんてやったことなかったものを今年は何回かやってバリエーションもできている。常に変化、進化しているっていうのは感じます」
 
 湘南スタイルというと縦に速いイメージが強く、象徴的なプレーとして人数をかけたカウンターのシーンがクローズアップされることが多いが、印象が強烈なだけで実際に思うほど多くはない。
 
「カウンターのイメージは強いですけど、カウンターで攻めているシーンというのはあんまりないと思うんですよね。J1はリスクを負って攻めてくるチームもないし、攻撃の部分を外国人選手にまかせるチームが多いなかで、なかなかそういうところはなくて。もちろんいいカウンターから取った得点だったり、惜しいシーンはあるんですけど、大半は後ろからしっかり繋いで丁寧に崩していくシーンだったり、しっかりボールを動かしながら、どこかで相手の裏を突いたりっていうシーンがほとんどだったと思う。間違いなく試合の質は、去年よりも上がっていると思うし、やろうとしていることはある程度やれているのに結果が出ないのは残念。だけど、確実に進化はしてます、やっぱり」
 
 J2でハマった縦に速いサッカーの象徴がカウンターだった。しかし、それだけで勝ち抜けるほどトップリーグは甘くない。昨シーズンは、縦への速さに加えてボールをつなぎながら攻撃を組み立て、相手の守備を崩してゴールを狙うシーンを増やし、今シーズンは攻撃の組み立てにさらなら工夫が施され、いっそうの深化を目指して歩んでいる。
 
「亮太くんが抜けてもボールを動かして走れる選手は他にもいる。でも、誰かが抜けたからその代わりというよりは、抜けた選手とはまた違う特徴を持った選手が入って、また新たなアクセントを加えているっていう感じだと思う。スタイルは同じでも人が変われば違うプレーが出るのが当たり前のことだと思うし。
 例えば北斗(下田)なんかは、動きながらボールを動かして裏への一発のパスだったり、ミドルシュートだったりが打てる選手。左利きだし、去年はなかったピース。優太(神谷)はボランチの位置からドリブルでスルスルと抜けてゴールに向かっていったり。俊輝(石川)も去年より落ち着いてしっかりボールをさばいて、球際もしっかり行ったりできている。ボランチだけでも去年とは違うタイプの選手がいっぱいいるわけで。うちには、すごくいい選手がたくさんいるなっていうのは常に思ってます」
 
 今シーズン、新しく加わった選手が迷いなく湘南スタイルを体現できていることこそ、三竿選手が担ってきた役割の結果。この成長を勝点に結びつけることこそが今、求められている。

>成長を結果につなげるために 今はただ、全力で臨むだけ