ボイス

【ボイス:2016年9月22日】奈良輪雄太選手

かつての仲間と真剣勝負
勝利したからこそ知り得た喜び

 奈良輪選手といえば、1stステージ第9節、4月30日に日産スタジアムで行われた横浜FM戦でのプレーと、試合後の涙が印象に残る。
 
「それ、よく聞かれるんですけど自分でもわからなくて。多分、自分の中で本当に強い気持ちで臨んで、100%力を出して、それで単純に勝てたからうれしさが出たんじゃないかと。『こうだから、こういう気持ちになった』とか、そんなことは言えないですけど、あの雰囲気の中で全力でサッカーに取り組んで、結果が出たから、ああなったんだと思います」
 
 プロになれば今現在所属しているチームが何よりも大切。それはどの選手も変わりはないだろう。それでも、自分が育ったクラブチームへの思いは尽きることなく深い。
 
「F・マリノスにアウェイで対戦する試合だったし、チームがなかなか勝てていない現実もあったし、個人的にもリーグ戦にコンスタントに出られていない状況もあった。だから、いろんな意味を込めて本当に絶対に勝ちたいって気持ちと、もらったチャンスを活かしたいっていう気持ちと、ベルマーレに関わる人にもF・マリノスに関わる人にも自分の存在を見せたいという気持ちと、いろんな思いを持って臨んだ試合でした」
 
 横浜FMとの対戦は、リーグ戦の日程が発表されてすぐに確認した。特に開幕直後の2試合で試合出場がつかめなかったこともあって、何が何でも早く試合に出て9節の試合出場を勝ち取りたいという思いを強めたという。実際にスターティングイレブンに入ったことを知ったときは
 
「どの試合でもメンバーに入ったときは単純にうれしいし、その試合に向けて気持ちを高めるのは当たり前ですけど、あの試合に関しては、わざわざ気持ちを高めなくても勝手にそういう気持ちになっちゃう、逆に空回りしないように気持ちを抑えることに努めてました」
 
 アウェイの白いユニフォームを着て、日産スタジアムのピッチに立った。
 
「正直、考えられなかったことだった。アウェイのロッカールームを使って違和感があったし、試合前にF・マリノスの選手と握手をして試合に臨むことにも違和感があったし、キックオフを逆からするのも違和感があった。でも、F・マリノスの選手と真剣勝負ができたのは、勝ち負け以上に楽しかったし、いい経験になったと思います。
 それと、F・マリノスを相手にサッカーをすることで、F・マリノスっていうチームは本当にビッグクラブなんだなということを再認識するというか、新たに感じるというか。そう思いながら試合をしてました」
 
 外に出て改めて感じる思いがあった。
 ベルマーレは、キックオフから4バックを選択し、奈良輪選手は右サイドバックで出場した。マッチアップの相手は、昨年までのチームメイトの中でも特に仲の良かった齋藤学選手。
 
「あいつとは、練習後に毎日のようにダッシュとかやっていた仲。試合に使われた意味も、学に仕事をさせないことが求められたと思う。曺さんに何か言われたわけじゃないけど、自分はそういう気持ちで試合に臨んだし、逆に学もボールを持ったら仕掛ける気持ちでやっていたって試合後に言っていたんで。練習を一緒にやって、試合も同じチームで味方としてがっつりやって、今度は敵として対戦した。これは、公式戦でしか味わえないものがあって、言い方があっているかはわからないけど、楽しかったです」
 
 どれほどの力を持った相手かを知り尽くしているからこそ、真剣勝負ができたことがうれしかった。だからこそ譲れなかった勝点3。
 
「なかなか勝ててなかったし、得点があまり奪えてなかったんで、先制点は絶対に取られたくないと思っていた。ディフェンスラインに入っていたっていうのもありますし。で、起点になるのは間違い無く学だったんで、そこを抑えるのが自分の最大の仕事だと思って、それだけに集中して試合に臨みました」
 
 先制点を決めたのは、後半の早い時間。たっぷりと時間が残っている時間帯に複雑な気持ちが交錯した。
 
「先制できたのはでかいし、嬉しかったけど、後半の立ち上がりの時間だったんで、ここから苦しい時間になるなっていう気持ちが同時に沸きました。
 F・マリノスは、得点を多く取るチームではなくて、最少失点プラス少ないチャンスをものにするというチームなんで、そんなに大きくスコアが動くゲームにはならないと思っていた。実際に自分がF・マリノスの試合に出てもそういう考え方でサッカーをしていたし、F・マリノスから点を奪うのって本当に難しいと思う。だから、本当は2点取ってゲームを決められるような試合ができれば理想だけど、個人的には1点入った時点で逃げ切ることを考えました」
 
 対横浜FM戦での勝利は、1997年5月以来19年ぶり。記録に残る試合となったが、その戦いぶりを振り返るとむしろ、印象的なプレーが多い、記憶に残る試合だった。なかでも奈良輪選手と齋藤選手のマッチアップはタイムアップ直前まで目が放せない緊張感にあふれていた。奈良輪選手の執念が引き寄せた勝利だったのかもしれない。

>熱いチームでサッカーがしたい 移籍の決め手は昨年の記憶