ボイス

【ボイス:2021年7月30日】池田昌生選手


120%で頑張って、サッカー人生一番の競争をする日々

開幕当初、チームはまだまだ未熟な存在。
練習ごとに、試合ごとに、選手が成長することで
チームの成熟度も上がっていく。
シーズンが終わる頃、どんな姿になっているのか?
チームの未来の行く末は、選手一人ひとりが鍵を握る。
そこで、今シーズン新たにチームに加わり、
急速に存在感を大きくしている池田昌生選手に、
今感じる自身の成長と、チームの課題を聞いた。

毎日120%を出し切って
危機感いっぱいのポジション争い
 シーズンがスタートして5カ月、開幕戦から振り返ってみると試合出場を果たしている選手の顔ぶれに変化が起きているのがわかる。試合を重ねながらチームが少しずつ熟成していく中で、選手が切磋琢磨して成長し、チームに個々の彩りを加えているからだ。特に成長著しいのは、若手の選手たち。今季、J3の福島ユナイテッドFCから加入した池田昌生選手もその一人。開幕戦はバックアップメンバーで迎えたが、ルヴァンカップなどでチャンスを掴み、今やリーグ戦でも出場を期待される選手に成長している。

「最初は正直、J1のプレーのスピードとか切り替えの強度とかに戸惑うこともありましたけど、今はそのスピードにも慣れてきて、自分の技術だったり判断というのは、プレーで表現できてるので、そういった部分は成長したなと思います。あとは普段の練習でやっていることが間違ってないんだなっていうのを試合に出て感じることが多くて、自分がやれているという自信もついてくる。試合を重ねるごとに自分が成長しているなっていうのは、思いますね」

 試合で練習の意味を実感できるのは、選手にとっては大きな経験だ。しかも試合は、それ以上のことを教えてくれる。

「練習だけでも成長はしますけど、やっぱり試合に出ないと。試合でしか得られないもの、試合でしか感じられないものがあると思うし、それは試合に出ないと感じられないし、得られない。非常に大事なことなのかなと思います」

 最初に試合出場のチャンスを掴んだルヴァンカップグループステージは、最後の柏レイソル戦で80分に交代した以外、全試合フルタイム出場を果たした。引き分けが多かったが負けることなく戦い抜き、リーグ戦に出場する選手たちを大いに刺激する内容を披露した。

「正直、最初の頃は、ルヴァンにも絡めるとは思ってなかった。自信はあったんですけど、『本当に出られるのかな』っていう気持ちはどこかにあって。でも、ルヴァンに出させてもらって、『やれる』っていうことを思い出したし、自信も深まった」

 J3からJ1へ。カテゴリーを1つ飛ばして昇格してきた池田選手の複雑な思い。「J1でもやれる自信はある」といっても実際にあるのはJ3での経験のみ。自信と不安の間で揺れる気持ちがあって当然だ。しかも、その不安を解消し、本当の自信をつけていくためには自分で道を切り開くしかない。

「リーグ戦の前半はなかなか試合に絡めなかったけど、バックアップメンバーでもブレずに『自分はできる』と思いながら取り組んできました。あとはやっぱりJ3からきたので、福島の選手は僕のプレーとか試合を気にすると思うんですよ。そういう人たちに恥ずかしくないようにという気持ちが自分の中にあったので。下のカテゴリーの選手だったり、何も知らない人は『J3からJ1に行って、どれくらいできるんや』って思ってると思うんですけど、そういうのを覆したい気持ちもあったので、それも心に秘めながらメンバー外のトレーニングでも励んでやってきましたし。そうしたらリーグ戦にも使ってもらえるようになりました」

 期待はあったが自分にとっても少し意外だったルヴァンカップグループステージ初戦からの起用。もう一つ驚いたのは、任されたポジションだ。しかも、その後はさらに複数のポジションで起用されることになる。

「最初の頃は、右のセンターバックで出たり、右のウイングバックで出たりすることが多かったんですけど、でもどこのポジションで出ても自分の良さを出すのはプロとして当たり前なので。あとはいろんなポジションができるっていうのも自分の強みの一つなので、特に戸惑いとか迷いはなかったです」

 移籍のリリースに掲載されたポジションは、フォワードだった。

「ウェリントンみたいな一番前のフォワードじゃなくて、トップ下みたいな。最近やっているシャドーのところが自分は一番やりやすいポジションなんですけど。福島では、右のウイングバックやサイド、最後はボランチをやったりしましたね。でも、後ろのセンターバックは湘南に来て初めてやりました。といっても3バックの右、ガチガチのセンターバックじゃないので、そこは良かったですね」

 そのポジションを託されたのには、きっと意味があるはず。そう考えるのが池田選手。

「自分のスピードを買ってくれて、そこに置いたら面白いんじゃないかと思ってくれたと思うし、自分の特徴は攻撃なので、そこのポジションでどれだけ攻撃に対して自分の良さを出せるのかっていうところを求めてくれたんじゃないかなと思います」

 現在も試合の中で複数のポジションを移動することもあるが、最も多く起用されているのは2列目のポジション。ライバルがひしめき合ってるポジションでもある。

「めちゃめちゃ多いです! 困りますね(笑)。でも、今までのサッカー人生で一番いい競走ができているというか。激しい競争というか。毎週、120%でプレーしないとメンバーにすら入れないという危機感。それもやっていてすごく楽しいんですけど、自分の中では。それがあるので毎日充実してます、楽しいですね」

 ライバルが多いということは、より自分の個性や特徴、できることをアピールする必要がある。もっとも意識しているのは、ポジショニングだ。

「相手の中間ポジション、相手にとって嫌なポジションに立つことで他の選手がフリーになることもあるし、味方に食いつけば僕がフリーになるしっていう。特にシャドーで出るときは意識してる。あとは間で受けて前を向くこと、前を向いた時にスペースがあったら推進力を生かしてドリブルで運んだり、パスと使い分けて、自分が出ていくときにはスピードを活かして前に、というのは意識していますね」

 スピードとポジショニングがキーワード。そのなかでパスとドリブルを使い分け、人を活かすプレーもすれば、自分でシュートも打つという、プレーの選択肢の幅を持とうとしている。

「昔から自分の長所って何? って聞かれたときに、パッと思い浮かぶものがなくて、それが一つの悩みだったんですけど、自分が思い描いている選手像は、でっかい五角形ができる選手。言うたら完璧な選手なんですけど、パスも上手でドリブルもできて、スピードもあって、ヘディングもできて、で、守備もできる。ずば抜けた特徴があればいいかもしれないですけど、自分はそれがないって考えたときに自分が持っているものを全部伸ばそうというふうになった。それが理想像としてある」

 レーダーチャートの五角形をできるだけ大きくしたい。それが自分が理想とするサッカー選手像。今は、その理想に近づくための毎日を過ごしている。

>課題は精度と強度 攻守両方で上げていきたい