ボイス

【ボイス:2018年2月12日】端戸 仁選手

100%で練習に取り組む厳しさを知ったシーズン、
練習に向かう姿勢がすべての結果に繋がった。

幼くして注目を集め将来を嘱望されながらも、
思うような結果がついてこない選手がいる。
移籍によって湘南の地を踏む選手には、
そんな背景を持つものも少なくない。
在籍3年目を迎えた端戸仁選手もそうした選手の一人だったと言える。
しかし、昨シーズンは本来の輝く姿を彷彿とさせつつ、
新たな境地を開いたプレーをみせ、
観るものにさらなる期待を抱かせた。
2018シーズンに向けて、
これまで以上のブレイクを期待させる端戸選手が
昨シーズンにおける自身の成長を振り返った。

チームのために、仲間のために
その思いが成長の証
 数字という結果は、とてもわかりやすい。大概の場合、評価の指標となるものだが、特に前線を主戦場とする選手の場合、自らゴール数に強いこだわりを見せることが多い。端戸選手もそうした一人だ。しかし、2017シーズンに限っては、数字以上に響くプレーが目に焼き付いている。チームのために走り、身体を張って起点となり、持ち前の技術力を駆使してチームメイトのゴールをおぜん立てしたプレーの数々が。
 2017シーズン、決めたゴールはわずかに1つ。しかも、得点できたのは、最終節を残すだけとなった第41節。自身に求めれば求めるほどゴールが遠いシーズンだった。

「2017年は長いシーズンでした、めちゃくちゃ。個人的なことを言うと、点が取れなかったというのがやっぱりすごく苦しかったですし。チームとしても1試合も気が抜けない試合ばかりだった。しかも、3-0、4ー0で勝つゲームじゃなくて、1-0とか2-1とか本当に1点差で、最後はみんなで身体を張ってギリギリの勝利というのが多かったんで、身体的にもそうですけど、メンタル的にもこう、絶対にJ1に上がるという気持ちを持って戦っていながらも、しんどかったと思うときはたくさんありました」

 それでも、手にした結果は1年でのJ1復帰に加え、J2優勝という最良のもの。また、端戸選手自身のゴールは確かに少なかったが、その存在が十分に大きいことを感じさせるプレーを見せ続けられたシーズンでもあった。

「チームとしての目標である昇格、優勝というのが果たせて、それに少しでも関われたのは良かったなと思います。でも、僕自身は、やはり点が取れなかったですし、決定的な仕事という意味では少なかった。良かった面もあるけど、そういう意味では個人的な出来は全然満足できるものではないんで、さらにレベルアップしていかなきゃいけない。もっともっと決定的な仕事だったり、ボールを収めて攻撃にたくさん関わりたい。上には限りがないんでもっと上手くなっていきたいですね」

 結果を振り返れば、やはりフォワードを自分のポジションとして生きてきた選手としての自負が顔を覗かせる。

「自分はストライカーというタイプではないですけど、やっぱり得点にこだわりはある。これだけ試合に出て1点も取れなかったのは、自分のプロサッカー人生というより、サッカーを始めてから1回もないと思う」

 リーグ戦42試合のうち、出場したのは27試合。特にケガの影響もあったシーズン前半は途中出場・途中交代が多かったが、それでも出場試合を10数えても点が取れずにいたあたりから不安な気持ちが芽生えたという。その後は毎試合前に、「また取れなかったら、どうしよう」という考えが頭をよぎった。

「そう思っている時って本当に取れないもの。無欲にならなきゃいけないけど、どうしても頭では得点が取れていないことを考えちゃって。そういう1年だったんで、振り返ると本当に何かいろいろきつかったなと思います」

 ゴールを決めたのは、2017年11月11日に開催された第41節アウェイのFC岐阜戦、前半終了間際にPKを与えて先制された試合だった。その後チャンスは得るものの決めきれず、1点のビハインドのまま試合は進み終盤へ。互いに譲らない展開ではあったが、しかしベルマーレの選手たちからは一矢を報いたい強い思いが伝わった。その思いは87分に端戸選手のゴールとなって実を結んだ。

「最初、オフサイドの旗が上がっていたんで、『うわ、マジかよ』と思ったけど、相手が触ったボールだったし、そこはレフェリーが冷静に見ててくれたんで良かったです。本当に」

 念を押すように最後についた「本当に」という言葉に、得点を取れて心底安堵した気持ちが伺われた。

「(高山)薫くんが前節から久しぶりに戻ってきて、あそこでPKを外してしまっていたからそのまま0-1で終わらせたくなかったっていうのはすごくあった。なんとか、みんなで取り返さないとって。いや、PKはやっぱり簡単じゃないんですよ」

 高山選手が復帰にどんな思いをかけていたかを知っている。加えて、これまでのサッカー人生で自身もPKを蹴る立場を担ってきた。だからこそ、その難しさもまた知っている。後半32分にPKを失敗していた高山選手のために重なり合った思いが、得点が取れていない自分への過剰な意識より、優ったことで生まれた得点だった。まさに2017シーズンの端戸選手のプレーを象徴していたといえる。どのプレーもチームへの思いが光る。

「このチームは、全員が全員のために走ることがすごく大事。だから個人的に点が取れてないなかでもチームのために走るだったり、ボールを受けるだったりという気持ちだけは忘れないで1年間やってきたつもり。みんながそういう思いを持ってやったからこその優勝だと思う。みんながめちゃくちゃ上手くて横綱相撲で毎試合3点取ってみたいな勝ち方じゃない。練習からチームのためにということを考えてやってきた結果が現れたのかなとは思います」

 チームのために。2017シーズンに決めたゴールは一つでも、その気持ちが多くの実りをもたらしたことは間違いない。

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