馬入日記

【馬入日記:8月18日】良い苦しさ

IMG_41621-0で勝点3を得た試合にも、杉岡大暉選手が千葉戦を振り返る表情には苦々しさが残ります。

「本当に完全に相手のゲームでしたし、自分達はボールを奪った後も何もできなかった。あのレベルのプレスを外して行かないと、来年J1に上がれたとしても勝てないなと感じさせられましたし、まだまだです。正直相手のハイラインがあそこまで脅威だとは思っていませんでしたし、僕にとってはサッカー人生でも初めてというくらい、嫌でしたね」

前半戦、第5節で一度相対した千葉との試合には、U-20日本代表の遠征のため杉岡選手は出場せず。今回初めて対戦した相手に、杉岡選手はこれまでにない経験を突きつけられました。攻守両面で相手に主導権を許し「自分の力の無さを感じた」と語る言葉には、再び自らの足元を見つめ直す姿が見えます。

それでもここ数試合、チームは苦しい戦いを強いられながらもしぶとく勝点を積み上げ続けてきました。プロ1年目を過ごす杉岡選手もその中で23試合の出場を積み重ね、日々得難い経験を糧に研鑽を重ねます。「千葉戦は本当に何もできませんでしたけど」と前置きしつつも、馬入での練習と、重ねた23試合で得た手応えを確かに残しています。

「相手のサイドアタッカーとの裏の対応での駆け引きとかは、最初の頃に比べたら良くなってきているし、攻撃面でも裏を取る動きは味方と合わせられてきていると思います。みんなの特徴を互いに理解しながら、味方がこういうふうにボールを持ったらここに出てくるとか、そういうところを合わせながらプレーできるようになっている。自分の中ではシーズンの前半である程度結果が残せていたところから、(第19節)京都戦や(第21節)名古屋戦は内容的にも何もできていない時期があったんですが、その頃に比べると今は充実感がありますし、自分の中でやれている感覚はあります」

思えばシーズン序盤、積極果敢な攻撃参加と得点に注目が集まった時にも、自分は守備の人間と、杉岡選手は目立ちにくい守りでの貢献も忘れませんでした。自分の中での基準を明確にし、そこへの意識を絶やさなかったからこそ、着実に経験を自身の成長に繋げられています。しかしだからこそ、さらなる強みが必要と、再び自らに矢印を向けます。

「自分の武器をはっきりさせないと、と思います。いまは誰にも負けないストロングというのがはっきりしていないんです。まんべんなくできるということは強みかもしれないですけど、例えば千葉戦のような試合状況の時には、しっかり立ち返られる場所、自分の拠り所となるものが欲しい。それは高校生くらいの時から感じていることで。ここまで良い経験ができているので、それを生かして作っていきたいです」

シーズンも残す所3分の1。ここまでと同じく、変わらず左サイドを駆ける杉岡選手の姿を期待しますが「しっかりプレーしないとすぐ出られなくなると思う、もっとうまく、もっと成長しないと」と本人に満足感はありません。毎週の試合に向けて、個人としてもチームとしても、気の緩みを作りません。

「4連勝していますけど、チームにそういう浮いた雰囲気はないですし、良い苦しさを持ちつつやれていると思います。ここからどれだけ質を上げていけるかだと思いますし、連勝しているこういうタイミングで悪い負け方をしてしまう時が多いので、同じ失敗を繰り返さないようにしたい」

試合毎に学び、驕ることなく向上を志す。苦しみをも糧として、チームも杉岡選手も止まることなく残りの3分の1を歩みます。