ボイス

【ボイス:2016年12月23日】高山薫選手

良いサッカーができている今
このチームで優勝を

 高山選手は、ファン・サポーターといった自分たちを見つめる人から発信されるメッセージを正面から受け止める姿勢を持っている。
 
「連敗しているとき、ブーイングされて『湘南らしさが出てないじゃないか』って言われたんですけど、湘南らしさを決めるのは、見ている人だと思う。それは俺たちが判断することじゃない。見ていて、『湘南らしかった』って言われるのが湘南のサッカーだと思うから」
 
 実際に、具体的な言葉として届いたわけではない。ただ、連敗していた頃、試合終了後のため息や叱咤激励からそういう空気を感じた。
 
「プロはやっぱり結果にもこだわらなくちゃいけないし、やってきたことに後悔はないけど、それを形にできなかったというのはやはり力不足だった。試合を見てくれている人に元気な姿を見せて、苦しくても勝てなくても、『湘南らしいね』って言われるくらいやらなきゃいけなかったと思う。そういう意味では、全然らしさが出てないじゃんっていう試合がたくさんあったんで、そこは本当にこう、悔しいというか」
 
 だからこそ、高山選手自身が天皇杯に託す思いは強く深い。
 
「優勝を見せたいです。優勝が湘南らしさになります。そもそもJ1のレベルだったら自分たちのサッカーを出さなきゃまず勝てない。自分たちのサッカーを今変えて優勝できるかって言ったら、絶対できないし。俺らが優勝するときは、絶対に湘南のサッカーをしたときなので。J2に降格することはもう決まっていて変えることはできない。優勝しても、見てくれていた人たちへの恩返しにもならないですけど、来年も応援してやろうみたいな気持ちにはなってくれると思うし。だからしっかり優勝して、次に繋げるっていうのは、大事だと思います」
 
 今、いいサッカーができている、という実感があり、そこに喜びがある。この経験を来シーズンにつなげたい。
 
「練習に対する姿勢とかまったく変えなくていいと思うんです。それから、曺さんも言っていたけど、何をしてもうまくいかないとき、そういうときに何ができるかっていうのがすごく大事だと思うし、そこの力が俺、キャプテンとしても、いち選手としてもなかったと思う。チームがうまくいかないときとか、自分がなかなかうまくいかないとき、それでも胸を張ってやるっていうのが、本当に大事だと思う。
 そういう意味では、今年について後悔はないんですけど、でも来年はこの経験をしっかり活かして、本当に120%やって、毎試合身体が動けないくらいやっていたら、勝っても負けても試合後のインタビューとかでも全部『やりきったから』みたいに言えると思うんです。今年だって、120%できていれば『言うことないです』みたいな感じで言えたと思うんですけど、そういう意味では足りないんで。それぐらいやりきりたいです」
 
 スプリント回数でも走行距離でも毎試合上位にランキングされてきた高山選手が常に100%で挑んできたことは間違いない。それでもなお自分自身に要求することで高みを目指す。
 そうした思いを持って臨む次の試合の相手は、J2降格の引導を渡された大宮アルディージャだ。
 
「あの試合、勝てなかったんですけど、内容はすごくよかったと思うんです。だからみんなイメージは悪くないと思うし、しっかり勝ちたい。ここで勝っても借りを返せるわけではないんだけど、リベンジしたいなって思います」
 
 これまでのプロ生活では12月の下旬までサッカーをしている経験はない。
 
「休みたい気持ちはありますけど、天皇杯、ここまで来たし、しかもすごいチャンスだと思うんですよね、なんとなくですけど、今年。こんな良いチーム、今さらまだ言うかって思うかもしれないですけど、でもこんな良い状態で。うん。
 大晦日のホテルは寂しいかもしれないですけど、行って、良い経験をしたいです」
 
 ただただサポーターが望む、湘南らしいサッカーを見せたい。その思いを込めて、ここから戦っていく。

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取材・文 小西尚美
協力 森朝美