ボイス

【ボイス:2018年9月21日】梅崎 司選手

一人ひとりが全力で戦ってこそ
サッカーがチームスポーツであることを改めて実感

デビューから10年以上の期間、第一線を走り続けてきた。
その間、求め続けたのはチームの勝利と自身のプレーで魅せること。
時にその両立が、難しいと感じても。
今、新しい環境で得たのは、これまでにない手応え。
新たな境地に足を踏み入れた梅崎司選手が今を語る。

改めて感じた
チームスポーツとしてのサッカー
 試合中、相手のディフェンスラインの選手がボールを持った瞬間、なんの躊躇もなくその選手との距離を詰めていく。振り返ることなく走り回り、相手選手を追いかけ、ひたすらボールを奪うチャンスを狙う。そして周りにいる選手たちは、スイッチを入れた選手の動きに自然と連動していく。
 今季から加入した梅崎選手は、今やベルマーレのサッカーを体現する選手の一人となった。自ら動いてチームを動かし、また逆に、チームメイトの動きに連動することでチームの駒ともなる。

「チームとしてどうあるべきか、それが個人を活かすんだなっていう感覚で今はやっているんで、そこの捉え方は大きく変わりましたね」

 サッカーにおいてチームと個のバランスは、相反するものとして捉えられがちだ。特に攻撃のセンスに秀でた、個人技で違いを作る選手にとってチームと個の両立のバランスを難しく感じる選手は少なくない。梅崎選手もそういう思いに心当たりのある選手の一人だった。しかし、ベルマーレでは個とチームは互いにあってこその存在だ。

「試合に出始めた頃、コンディションはまだまだだったんですけど、フィーリングは意外に良くて。攻撃の部分で違いを見せられるかなっていう感覚はあったんです。でも、チームの守備という部分を見たときに、やっぱり自分が出たときにうまくいってないな、すごく迷惑をかけているなっていう感覚がありました」

 守備の考え方も監督によって大きく変わるもの。曺貴裁監督は、守備もアグレッシブに仕掛けていくサッカーを志向する。自身が経験したこれまでとは違う守備のコンセプトに梅崎選手は戸惑った。

「プレッシングひとつとっても、どのタイミングでどこから出て行くのか、どれだけの勢いを持って相手に圧をかけるのか。連動する後ろの選手だったり、後ろのマークだったり、どうしても周りが気になって、すごく躊躇しながら行ってました。奪いに行く守備というよりは、抜かれない守備がやっぱり身体に染み付いていて、そこを変えるのがなかなか難しかったですね。それでも、ボランチの選手たちと話をしながら、聞きながら、自分の中でちょっとずつ改善できていったのかなというところですね」

 今シーズンから新しくチームに加わり、第3節にはベルマーレの選手としてのデビューを果たしている。しかし、チームの哲学や戦術を完全に理解していたとは言えなかったと振り返る。だからこそ、得意の攻撃面で得た好感触とは裏腹に、チームとしての守備における自分自身のプレーに違和感を感じたのだろう。攻撃と守備、個とチーム、そのバランスに悩まされた。特に梅崎選手が担うことの多いシャドーは、攻撃に重心を置くポジションでありながら、守備への貢献度の高さは抜きん出ている。

「シャドーの経験のある選手はみんな言いますけど、僕も実際それを痛感してました。どこかで攻撃に力を残しておきたいっていう思いもすごくあったし、そうやった方がいいよって言ってくれた選手もいました。だけど、どこかでそれじゃあダメだなと。このチームは、一人が手を抜いたらチームとしてのやり方が機能しないし、チームとしての機能を全力で果たせなかったら、試合にも出られない。だからそこはマスト、当たり前に出来なきゃいけない。そこを完璧にこなしながら攻撃でも違いを見せていけるようになりたいなって思いました。僕の中で気持ちをチェンジできたんです。チームの流れを作らないと個人が活きることはないと思いました」

 攻撃が得意な選手だからこそ感じていた、守備に全力で取り組むことで攻撃にかける力が残らないのではないかという恐れ。しかしそれを乗り越えた先にあったのは、攻撃にも守備にも全力を傾ける、よりサッカーに貪欲になった自分自身との出会いだった。

「このチームを見てきて、このチームはどうあるべきかっていうことをすごく意識しました。これまでは、チームと個人は別物だって考えるところがあったんですけど、いまは同じというか、ふたつでセットっていう考え方に切り替えられた。これが当たり前にできないと戦っていけないし、勝っていけないという感覚があるので、そこは大切にしています……大切というか、当たり前になんなきゃいけない」

 今、梅崎選手は、一瞬の間さえ戸惑いを見せることは、ない。むしろ最前線から最後尾までチームが必要とするスペースにいる、そんな印象だ。こうした変化に梅崎選手自身もまた驚いている。

「これまでもチームのためにという気持ちでやってきましたし、チームのなかでどうやって個人が活きるかをいろいろ考えてきました。でも、自分が活きるためにチームを活かさなきゃっていう感覚は、新しいというか、久々というか。今までもなかったわけじゃないけど、どちらかというと自分が生き残るためにどう個人を見せていくかという考えをもとにチームのバランスだったりを考えていた。どちらかといえば、チームと個人は別な感じがあって、僕にとってチームプレーって、ちょっとネガティブな要素があったりもした。チームに引っ張られすぎると個人がどんどん消えていくような感覚ですね。実際、個人的にもっと成長したいという思いも移籍の理由の一つだったし。でも、今改めて、サッカーってチームスポーツだということをすごく感じています」

 チームと選手個々は表裏一体、攻守に渡る全力のプレーがチームのハーモニーに昇華される。新たな境地で挑むこれからの戦いに、一層の輝きを期待したい。

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