ボイス

2018.02.16

【ボイス:2018年2月16日】秋元 陽太選手

誰がピッチに立っても戦えるチームへ。
全員の成長を最後尾で感じて

選手が入れ替わっても、チームとしての経験は翌シーズンの糧となる。
それは、曺貴裁監督が積み重ねてきた6年間に限らず、そこに至る道筋までを含めて、振り返ればよくわかること。
多くの選手が「長かった」と口にする2017シーズンの経験もまた、動き始めたシーズンの力となるはずだ。
今回は、2017年に2年ぶりに復帰し、J2に降格したチームのJ1復帰を引っ張った秋元陽太選手がシーズンを振り返るとともに、来るべきシーズンへ繋ぐ思いを明かす。

選手個々もチームとしても
自立と判断が成長の鍵
 2018年を迎え、秋元選手の在籍は4年目を数えることになった。ともに戦ったのは、J1復帰へ執念を燃やした2014年、J1定着を目指し、最終的にJ1で8位の成績を納めた2015年、そして2度目のJ2優勝を成し遂げた2017年の3つのシーズン。どのシーズンも曺監督が継続して指揮を執っているが、選手が代わればチームが放つ輝きも変わるため、3つのシーズンのチームは、それぞれに特徴的だった記憶が残る。その経験から感じるのは、2017シーズンと以前の2シーズンでは、チームの構成から違うということ。

「2014年は中盤にも前線にも最終ラインにも核になる選手がいた。今年もバイアはいましたけど、薫(高山)だったり、俊介(菊地)だったりっていう核になるべき選手がケガでまったく抜けてしまった。そういうなかで、うちはみんなで守ってみんなで攻めるチームだというのを理解して、みんなで声を掛け合って実践できた年だった。それは、2017年から出始めた山根(視来)や大暉(杉岡)といった若手が成長したおかげ。みんなで切磋琢磨した結果、誰が出ても変わらずに戦えるチームに成長できたからだと思います」

 チームの柱とも言えるキャプテンの高山選手が開幕間もない第5節に負傷し、長期離脱。その高山選手に代わりキャプテンマークを巻いてピッチに立った菊地選手もケガの状態が思わしくなく、開幕して2ヶ月経った頃に別メニューとなった。このタイミングで秋元選手にキャプテンマークが託された。
 とはいえ最後の砦とも言えるポジションのゴールキーパーは、もともと他のフィールドプレーヤーとは趣の違う責任を負っている。そうした重圧に加えてのキャプテンマークは、さぞ荷が重いに違いない。ところが秋元選手は、キャプテンマークに対してまったくプレッシャーを感じることはなかったという。

「ゴールキーパーは、一番責任を負わなきゃいけないポジションだと思ってます。でもそれだけじゃなく、僕自身、選手として今年加入した時点から責任を感じていました、出戻りで帰ってきたわけなんで。ファンやサポーターの方みんながみんな、歓迎してくれているわけじゃないと思ってましたし。目に見える結果を出さない限りは、選手としての信頼は取り戻せないと。だからこそ、シーズンが始まったときから僕が試合に出るのであればチームを引っ張るくらいの責任を負わなきゃいけないと思っていました」

 ベルマーレに1年で戻ることを決めた時点で期する思いがあった。また、その責任感ゆえに、シーズンを通して試合中にディフェンスラインを始め、ピッチ内の味方選手に厳しく要求する場面も多かった。

「『それはダメだろ』っていうときに、誰かが言わないとやっぱりチームは締まらないと思うので。言わないで失点したらもったいないですし。チームを引き締めるためにも、あえて怒ったりというのはありました。それも自分のなかでは考えてやっていたこと。そこはこの1年、自分自身、成長できた部分かなと思います」

 秋元選手自身もまた、2014年、2015年から成長し、違った姿を見せたシーズンだった。

「2年前は亮太(永木選手:鹿島アントラーズ)がいて、航(遠藤選手:浦和レッズ)もいて、彼らがチームを引っ張っていたので、それに対して自分はサポートしているという認識でした。でも去年に関しては、自分がチームを引っ張っていかないと上には行けないと思っていたので、本当に覚悟の上でやってました」

 特に意識して声をかけたのは、ディフェンダーへコンバートさればかりの山根視来選手や高卒ルーキーの杉岡大暉選手。プロとしての経験値の少なさをカバーする声がけだった。

「経験はないけど、その分彼らには伸び代がすごくあったわけなんで、彼らの成長のためにも僕はどっしり後ろで構えていようというのは思っていました。コーチングの部分に関しても、山根だったら気づかせたり、厳しく言うべきことは厳しく言ったりとか。大暉だったら別にミスしてもいいからもっともっと積極的にやれよ、とか。すごく意識してコーチングしてましたね」

 出場機会が多かった選手の移籍や、ケガによる長期離脱選手がいたことによって、2017シーズンはピッチに立つ選手も新鮮な顔ぶれが多かった。それは、選手個々の成長のみならず、チームとしての成長も大きく促すこととなった。

「最初はやっぱり曺さんに依存していたことを、僕はすごく感じていました。曺さんが『繋げ』といったら繋ぐばっかりになってしまって。そこは蹴っても大丈夫だろうと思うことも何度かあった。自分たちの判断がないというのが課題だと思いましたね」

 印象的な縦への速さを取り上げられた頃とはピッチに立つ選手が代わり、結びつく個性が変化し、チームとして志向するサッカーが深化している。攻撃面では、縦への素早い展開から、2017シーズンはボールを繋いで相手を崩していく形も加わった。ところが新しい試みを意識するあまり、どんなときも繋ぐことばかりが優先では、それを深化や成長と捉えることはできない。

「曺さんが戦術的に求めるものプラスαだと思いますね。繋げと言われたから全部繋ぐんじゃなくて、繋ぐところと蹴るところの判断とか、ゴール前の守備だったらしっかりクリアすることも時には大事。マイボールを大切にしてどう展開していくかの判断を向上させることが必要なんだと思いました」

 最後の砦である秋元選手は、すべてのフィールドプレーヤーの背中を見るポジションにいる。そこは、もっともチームの変化を感じられる場所でもある。曺監督への依存を感じていたチームが成長していく様を1年間見守った。

「『ここは落ち着かせよう』というのも、『今だ』っていうスイッチを入れるのも自分たちの判断です。僕としてはゴールキーパーに大事なのはチームを落ち着かせる部分だと思っていますけど、フィールドの選手からも『ここは落ち着いてやろう』っていう声も出てくるようになった。やはり自分たちで声を出してやっていくことが今後も必要だと思うし、シーズンを通して成長したのは、そこだと思う。それに、そういう判断ができるようになったのは、選手が自立ができてきたということ。みんな開幕の頃とは比べ物にならないくらい堂々とプレーするようになったし、成長が目に見えたシーズンだったと思います」

 判断の精度を上げることがこれからの成長となる。そしてそれは、J1での生き残りのカギを握る。

「まだまだだっていうのは、選手みんなが思っていることですし、J1が厳しいこともわかってますから。そういったところの緩みはありません」

 全員で戦うチームには、全員の成長が必要。それが、より高いレベルを戦い抜くパワーとなる。

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