馬入日記

【馬入日記:10月12日】助ける気持ち

IMG_5042 2ちょっと緊張したよと、先週末の水戸戦で後半開始からピッチを踏んだ野田隆之介選手は、回って来た出番にそう語ります。

「試合に出るときはいつも緊張するけど、後半の頭からって滅多にない。もちろん準備していなかったわけではないけど、ああいう形でプレーする機会が巡って来たので」

武者震いをも覚えた交代出場。不意に訪れたとは言わないまでも、前半を戦うチームは無得点ながら、ショートパスを中心にボールを敵陣に運び、チャンスも演出していました。「チームとしてもうまく崩せていたと思う」ベンチで見守った野田選手もそう感じていたなか、次を託された自身の役割を改めて確認しました。

「自分が起点になってゴール前で勝負する、というイメージはしていました。そのなかで、自分のところにボールが入った時にみんなが前に出て行くから、そこで奪われてしまうのが1番危険なプレー。だから信頼して前に追い越してくれるみんなのためにもボールを失くしてはいけないという思いは強かった。緊張しながらも堅くなりすぎずにプレーはできたと思う。でもミスも多かったし、チャンスもたくさんあったから、まだまだ精進が足りないです」

貴重な先制点を挙げ、勝利に一役を買った野田選手ですが、ここに至るまでに過ごした時間は決して順風ではありませんでした。9月末のとある日の練習後、そこには曺貴裁監督から厳しく叱責される野田選手の姿がありました。

「練習で他の選手がミスした時に、それを助けずに歩いて戻るような自分のプレーが結構あって。それまで自分ではチームのためにプレーしていると思ってはいたけど、改めて指摘されて見つめ直して、『チームのためにプレーするとは何か』を後でいろいろ考えるようになった。やっぱり助ける気持ちを持たないといけないし、そこからは誰かがミスしても自分のミスのようにしっかり戻るようにして。チームのミスは自分のミスだと心にちょっと持つだけで、辛い時も乗り越えられるようになったと思います」

あれが全てだったと、その時を振り返ります。「薫ちゃん(高山薫)や(武田)英二郎とかアドバイスをくれたし、優しいですよ、みんな」おどけたように話しますが、その時間があったからこそチームのためを想う姿勢が一層育まれたことに違いはありません。

水戸戦での45分間のプレーは、しかし確かな手応えと呼ぶにはまだ及ばないそう。「立ち止まらずに、どんどん成長していかないと」シーズンの終わりが見えてきたということは、自身を向上させられる時間がそれだけ限られてきたということ。前へ進もうとする想いは、シーズン開幕当初のそれと変わりはありません。

「これからも良い意味で変わって、良い意味で変わらずにやっていかないと。みんなどんどん先に行ってしまうし立ち止まってはいられない。自分で考えて、どれだけチームのためにできるかが全て。みんなそれをやっているから今の順位にいると思うし、俺はそれがここまでできていなかったわけだから。チームのために、尽くしていきます」

改めて水戸戦での得点について。「チームの手助けをできたのが嬉しかった」並ぶ言葉は自身の充実感でなく、チームに向けた想いそのものです。互いが互いを助ける気持ちが、野田選手を、そしてチームをいつも支えます。