ボイス

【ボイス:2016年10月21日】三竿雄斗選手

成長を結果につなげるために
今はただ、全力で臨むだけ

 三竿選手が加入した2014年は曺監督3年目のシーズン。曺監督自身が1年での昇格と1年での降格という結果を踏まえ、チームとして強くなることを改めて考えて臨んだシーズンだった。その結果としてJ2リーグの様々な記録を塗り替えた。それだけの力をチームとして身につけてなお、J1は厳しいステージだと感じている。
 
「全然違いますよね、J1とJ2。J2だとある程度前からプレッシャーかけるとロングボールに頼るチームが多かったし、それを拾って自分たちのボールにしたりできた。それに相手のシュートミスに助けられることも多かったですけど、J1はやっぱりクォリティーが高い。強力な外国人選手もいっぱいいるし。ちょっとのミスがすぐに失点に繋がる。厳しいリーグだと感じました」
 
 厳しいリーグで昨年は年間8位となった。そのチームは、曺監督とともに2度目のJ1へ挑む選手と、初めてJ1の舞台に立つ選手が大半。J1での経験値はさほど高くはないままだったが、それでも1年間、J1で戦うことを前提においてJ2リーグを戦ってきた自負があった。
 
「自分にとっては初めてのJ1で、3連敗は1回ありましたけど、しっかり自分のプレーができた。チーム状況も1年を通して悪いことはなかったし、自分も攻撃的な面をガンガン出して、守備のこともしっかりやってと、自分のことをまずしっかりやろうという気持ちで、ある程度は通用したと思うし、確実にJ2だった1年目よりもJ1を戦った2年目の方が充実感があった。達成感も多少ありました」
 
 負け知らずでリーグを勝ち抜き、勝点101を積んで勝ち取ったJ2の優勝よりもトップリーグでの13の勝利の方がもたらす喜びの方が大きかった。これこそがトップリーグの価値。選手はそれを身を以て知った。
 
「毎試合たくさんのお客さんの前でやれるし、相手も知ってる選手ばかりだし、毎試合毎試合すごく楽しかったです。
 もちろん今年も1試合1試合しっかり臨めているし、毎試合フレッシュな気持ちで入れている。周りがどう思っているかはわからないですし、結果が出ていないのでチーム状況も厳しいですけど、個人的には去年より全然やれているっていうのはある」
 
 手応えと結果が一致しない。その期間が長くなると、出ない結果に振り回されてしまうこともある。
 
「流れもあるし、ついてないところもある。でも、こんなに勝てないのは人生を通して初めてなので、自分自身苦しいし、なぜかというのはわからないとしか言いようがない。最近は失点も減りましたけど、最初の頃は多かったですし、悪い流れを断ち切れなかった」
 
 そんななか、三竿選手自身も調子を落としてしまったことがあった。
 
「けっこう負けが続いて、自分も失点に絡むことも多くて、しっかり守備から入ろうみたいな気持ちになった時期があって。川崎F戦(7月30日開催2nd第6節)、浦和戦(8月6日開催同第7節)、広島戦(8月13日開催同第8節)あたりから、これじゃあダメだって自分で思った。こういう状況だからこそアグレッシブに行こうと思ったあと、コンディションも良くてモチベーションも高かった鹿島戦(8月20課開催同9節)で先発に入れなくて。弟がいるチームだし、気合いも入っていたのですごく悔しかった」
 
 その後のガンバ大阪戦(8月27日開催同第10節)でゴールを決めた。
 
「前節出られなかった悔しさからアグレッシブに行って、そういう気持ちがつながった得点だと思います。でも、その後の2失点に絡んでるんで、空回りしちゃった感じです」
 
 コメントの終わりは、ため息交じりのものとなる試合の結果だったが、それでもこのゴールが示したものは小さくなかった。なぜならこのゴールは、右サイドから人数をかけて相手の守備網を崩し、逆サイドの三竿選手が最終ラインから走りこんで決めたものだからだ。この一連の攻撃には、湘南スタイルの今シーズンの深化が表現されていた。また、ペナルティエリアの外からの距離を鋭い弾道で仕留める技術の高さも見せつけた。今シーズン、曺監督が求め続けた成長の一端がうかがえるシーンだったことは間違いない。
 この成長を残留という結果につなげたいのは、選手であればこその思い。残り3節に希望を託す。
 
「厳しい状況ですけど、過ぎてしまったことは変えられないし、他のチームの結果もコントロールできない。自分たちにできることは、練習からしっかりやって残り3戦3勝して、あとは天にまかせるのみだと思う。自分たちは本当に精一杯やるし、そういう気持ちで練習もやっているし、絶対にあきらめない。だからサポーターの皆さんも、可能性がある限り、一緒に戦ってほしいと思います」
 
 残留をかけた戦いの最終章。一幕目は、3週間ぶりに再開される2ndステージ第15節の大宮アルディージャ戦。アウェイの地でも一丸となって戦えば、必ず勝機は得られるはずだ。

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取材・文 小西尚美
協力 森朝美