ボイス

2014.04.14

【ボイス:4月14日】菊地俊介の声

2014年シーズンが開幕して約1カ月半、
ベルマーレは7節を戦い終えて全勝とさい先良いスタートを切った。
ピッチではアグレッシブな湘南スタイルが継続されているが
躍動する選手の顔ぶれとその組み合わせは新鮮だ。
スタイルは継続されながらも、変わっていくものがある。
その変化がチームの可能性を広げていく。
開幕スタメンをつかんだ大卒ルーキー・菊地俊介選手が新しい風を呼び込んでいる。


まずは走ること
大学時代の倍は走ってます!

 曺貴裁監督が指揮を執る3年目のシーズンは、舞台を再びJ2へ移すことになった。J1でのチャレンジは、わずか1年という結果だったが、それでも曺体制の2年間を支えた何人かの選手はJ1のクラブにその実力を評価されてステップアップを果たした。それは、曺監督の指導と選手の努力の成果を表すひとつの形と言える。目指している方向に間違いはない。
 そうして迎えた2014年の開幕戦。スターティングイレブンには、新鮮なメンバーが名を連ねた。中でも目を引いたのが、大卒ルーキーの2人。今シーズンもキャプテンを務める永木亮太選手のパートナーとしてボランチを担う菊地選手はその一人だ。

「シーズン前はシーズンを通して多く試合に出るというのが目標だった。具体的には、4分の3、30試合くらいですね。もちろん、開幕スタメンでいきたいという目標はあったんですけど、ボランチでというのは自分の中では考えてなかったので、意外だったというか、何があるか分からないなと思いました」

 加入の発表があったのは、昨年9月。ビルドアップと守備のボジショニングに優れたディフェンダーとして紹介された。ところがプロデビューとなった開幕戦ではボランチとして登場。果敢に前を向く湘南スタイルを体現し、新しいチームへの期待をあおった。

「曺さんに『ボランチもできるだろ』というようなことを言われたんで、『できます』と答えて。そうしたらいつの間にかボランチになっていたっていう(笑)。
 シーズンが始まって紅白戦などで何回かボランチをやったんですけど、本格的にやったのはトルコのキャンプです。キャンプではセンターバックはちょっとやっただけで、あとはボランチしか練習しなかったというくらい」


 ポジション歴を振り返ると、小学生から高校生までは、トップ下の攻撃的なポジションを得意としていた。ディフェンスラインに下がったのは、大学生の時。しかし、2年生の時にセンターバックでレギュラーをつかみ、大学4年時には2年に一度行われ、学生のオリンピックともいわれるユニバーシアード競技大会に出場する日本代表にも選出されている。実を言えば、もっとも記憶にないのがボランチなのだという。

「やった記憶はあんまりないですけど、湘南は3バックなので、ボランチはセンターバックの要素も含んでいると思う。それに、大学時代はセンターバックは攻撃にさほど上がっていけなかったから、ゴールに近いところまで行って、攻守両面に関われるのは楽しいですね。走る量はセンターバックのときとは桁違いに増えていると思いますけど」

 大学時代は今ほど運動量を求められることはなかったが、もともと長距離は得意なところと話す。

「曺さんにも運動量を買ってもらっていると思います。『連続して守備をできる部分というのはいいところだ』と言ってもらえるので。後半ちょっとキツくなってきた時も、ひと踏ん張りして頑張るっていうのは、意識してやってます。
 何をするのにも走らないと。武富くんとか大槻くんとか、前線の選手もみんな走ってる。僕、若い方なので、負けてられないなって感じです」

 現在、新境地を開拓中。運動量を倍にして、新たな可能性を広げている。


経験を積むことでつけた自信
大学2年でプロになることを意識

 大学3年生の時に、初めてベルマーレの練習に参加した。

「若い選手が多いからか、練習から競争がすごく激しい。みんなひとつの練習に対して100%で取り組んでいるなというのをすごく感じて、こういう環境だったら自分がまた成長できるんじゃないかなと思いました。
 まぁ、そういった練習の中での激しさというところもあったんですけど、オフザピッチのところでの選手同士の仲の良さに惹かれたというのも結構大きい(笑)」

 プロを意識したのは、大学2年生の頃。サッカーをやっていれば誰もが一度は夢見るが、そうは言ってもプロまで登り詰めるのは容易くはない。ふわりとした夢を抱きつつも、現実的な道も模索しながら大学生活に入っていった。しかし、

「大学サッカーって、やっぱりプロに行く選手も多い。そういう意味では、試合で一緒に戦っている選手の中からプロに行く。そういうことが刺激になったし、2年生から試合に出場できるようになって、漠然としていたものが、自分にもチャンスはあるんじゃないかと思えるようになった」

 公式戦で試合経験を積み、大学3年生で大学選抜に、4年生でユニバーシアード日本代表にも選ばれた。

「3年生で初めて練習に参加させてもらったんですけど、そのときは結構緊張しました。その後、大学選抜に選ばれて、そこから自信がついて、4年生でまた練習に参加した時には、レベルアップした姿を見せられたかなと自分で思えた。やっぱり大学の公式戦で経験を積めたのが大きいですね」

 曺監督は、今シーズン加入した新卒の選手たちについて、「湘南スタイルを理解して、覚悟を持って入って来ている選手が多い」と語っている。

「去年の12月、シーズンが終わってから2週間くらいずっと練習に参加させてもらって、練習試合も多くやっていく中で、曺さんが求めるスタイルについて、少し理解して今シーズンに入れたと思う。そういう意味では、シーズンが始まってスタイルに悩むということはあんまりなかったです」

 ひとつ気になったのは、菊地選手が加入を決めた時点では、ベルマーレはJ1だったこと。プロデビューは、J2が舞台となった。思惑は外れたのだろうか?

「結果はやっぱり気になっていたからずっと見ていて、降格は残念なことでしたけど、それはそれでしょうがないというか、逆に自分が入ってJ1に上げられたら良いことなんで。だからそこは気にせず、まず1年頑張ろうと思ってます」

 頼もしい言葉通り、開幕スタメンをつかみ、今のところ順調に試合出場も重ねている。シーズン終盤に菊地選手自身とチームが手にする成果が楽しみだ。


キャプテンから感じる存在感
自分ももっと頑張らないと

 6節まで終えて全勝のチーム。ここまでの戦いぶりを振り返ると、チーム全体が慎重なプレーに終始した開幕戦から、初めて失点を喫したFC岐阜戦、相手に主導権を握られながらも最終的には4得点で勝利をもぎ取った松本山雅戦など、内容はさまざまだが、試合を重ねるごとにチーム全体の勢いは増している印象だ。その中で菊地選手は、5試合にフル出場している。そのプレーは運動量が落ちないことに加え、判断の早さと縦への果敢なトライが印象的だ。

「縦に入れて、自分が追い越していく。これは求められているところでもあるし、評価してもらっているところでもあると思う。早めに前にパスを入れるっていうのは意識しています。縦パスは、みんな意識していると思います」

 アピールポイントでもあるビルドアップやポジショニングの良さは、ボランチでも必要な要素。そういう意味でも特徴を活かせるポジションではあるが、1列上がったことによる戸惑いもある。

「ディフェンスのときとはプレッシャーがやっぱり違う。360度からあるので、慣れるまで難しく感じたところでもあった。特にトルコで最初にボランチをやったときには、相手のプレッシャーも速くて、ボールを少しさらすと突かれたりとかあったんで、早く動かしてポジショニングを取り直して、というのを意識するようになった。今は、徐々にですけど、余裕を持ってできるようになってきていると思います」

 逆に、1列ポジションが上がったことによって、ディフェンス面でよりアグレッシブさが発揮できるようになってきたのは、自分にとっても新しい発見だった。

「後ろにディフェンスの選手が居るっていう意味では、今までよりも思い切って守備に行ける。奪いにいく姿勢ができてきた。そういうところはやりやすいし、また違った楽しさがある」

 攻撃的な守備は、湘南スタイルの信条。相手のビルドアップに対応してファーストディフェンダーが動き、2人目3人目が連動してボールを絡めとり、その瞬間に攻撃へのスイッチを入れる。攻守に渡って、ボランチは要の存在だ。その役割を共に果たすパートナーの永木選手との相性もいい。

「亮太くんは上がりたいほうだと思うので、自分がバランスを取るっていうのは意識してやっています。亮太くんが上がったときにはしっかり僕が3バックの前でバランスを取る。でも、僕も出て行くときは出て行くし、そういうときは亮太くんが自然と引いてやってくれている。そこは、お互いを見ながら」

 “お互いを見ながら” そのコンビネーションは、1試合ごとに深まっている。しかも、開幕戦から運動量の豊富さで目を引いたが、試合を重ねるごとに菊地選手のプレーエリアが広がっているのもおもしろい。特に直近の試合では、攻撃時には永木選手に負けず劣らず菊地選手もペナルティエリア内まで走り込んで攻撃に絡んでいる。

「一緒にやっていて亮太くんからは存在感を感じます。もっと自分も頑張らなきゃいけないなと思う」

 次の試合も同じボランチコンビがスターティングイレブンに名を連ねるかはわからないが、それでもここまでの試合でパートナーを組む永木選手のプレーから与えられた影響は大きい。今のところの得点はセットプレーからのものだが、永木選手は同様、流れの中で得点する日も遠くはなさそうだ。

取材・文 小西尚美
協力 森朝美、藤井聡行